★☆★ とにかくきつい。久しぶりに骨のある山、それが巻機山だった ★☆★


 巻機山(まきはたやま)、読めたあなたは100名山通! (^_^)v
 機織姫伝説の残る隠れた山。そもそも伝説とは、「山中で絶世の美女が機を織っていて、その音が響いてきたり、満月の晩に従者とともに姫が里に下りてきたり」といった内容。新潟県六日町にある。

 ところで巻機山とは、「割引岳(わりめきだけ)」(1,931m)あたりから、「牛ヶ岳」(1,962m)ぐらいまでの山々の総称という説があり、ピークがどこかわからない。山頂の標識も「御機屋」(おはたや)という、分岐点に立ててある。


 巻機山は、池糖(ちとう)が点在するまろやかな山頂稜線の楽園風景によって「女性的」と評されているが、どうしてどうして 、ものすごい急登を強いられる山である。かなりの覚悟を持って登らないと楽園にはたどり着けない。なにしろ、登山口からの標高差1,350mは富士山5合目から山頂までに匹敵する。更に、今回はヌクビ沢という、初心者は入山禁止という険しい沢を詰めてしまった。こちらのコースは、豊富な沢水でナメとなり滝となって我々を喜ばせてくれるが、恐怖心との果てしなき戦いでもある。楽園を楽しむどころではない。幸いにして紅葉の最盛期に巡り会えて、なにやら人生の拾い物をした感もあった。


 日時:2002.10.13(日) 5:00〜16:00 (行動時間11時間)
 行先:巻機山(1,967m)  標高差:1,350m 歩程13km
 参加者:◎

    全ての写真はクリックすると拡大します。

巻機山登山ルート

 
一般的には井戸尾根(右側)ルートを往復するらしいが、今回はいきなりの冒険で、ヌクビ沢ルートを詰める。ここのところ雨も降っていないし、時間的にも大差ないだろう踏んでのチャレンジ。ところがどっこい、やっぱり沢を詰めるのは素人には大変なことだと言うことがイヤと言うほどわかる。
巻機山高低表

 標高1300mだけでも充分健脚の山に値する。しかも、急勾配が容赦なく迫っている。登りの神経戦、下りのヒザ痛との戦い、いずれもこれ以上ない苦しみだ。
登山口   5:10

 昨夜は19時に寝たので0時には目が覚めてしまった。テントの中でルートシミュレーション。3時起床。外は満点の星。北斗七星も、
カシオペアもオリオン座もまばゆいくらいに輝いている。やった〜、快晴だ。登山口駐車場は既に満車。登山届けをちゃんと出してヘッドライトの明かりを頼りに歩き出す。他の登山者もゾロゾロと登っている。
割引沢分岐  5:50
 

 割引沢分岐にさしかかる。沢を詰めるか巻き道にするか。ここは最初から無理をせず迂回路に回る。ヌクビ沢コースに来た人はだいたいが健脚なのでその9割方が割引沢を詰めているのではないだろうか。
夜明けが

 まだまだ沢に太陽光が差し込むには時間がかかる。これから向かう天狗岩がどっかと立ちはだかっている。
沢を詰める人


 迂回路から「吹上の滝」あたりを登っている人が確認できる。大きく手を振ると、向こうも気づいたらしく「ヤーッホー」と呼んでくる。こちらからも「アッホォ」と返す。
ヌクビ沢に突入   7:00
 

 いよいよヌクビ沢。「あ、巻道がない」と今頃気づいても遅い。ここまで来れば沢を詰めるしかない。ナメ滝を見て畳岩をよじ登る。鎖があるので楽なはずだが、へっぴり腰でおそるおそる登る奴。
怖いよう    どうしよう?? 


 いくら、雨が降っていないとはいえ怖いよう。筆者はうかつにもストックを落としてしまい20mぐらい逆戻りする。所によっては、壁が垂直に近く3点確保も出来ないところがあるのだ。
何度渡渉すれば  7:30

 
何回も左岸と右岸を行ったり来たり、もううんざり。いきなり滝が現れて進路を絶たれる。まさか、、、、そう、滝の横を直登するのだ。さぁ、ガンバレ。強がっている誰かさん。知らんぞ。
ひえ〜、こんなとこ登るんだよぉ

 
全くもう、垂直の壁を登らせるんだからぁ。足滑らせたら滝壺にドボン!。おっと、大文字草が咲いているぞ。何?見る余裕もない?岩から岩に飛び渡れない相棒は、水に浸かっての渡渉。登山靴に水が入らないのを祈るのみ。
延々と続く危険な岩場

 
 コンパスが短い者とっては辛い辛い沢登り。沢を吹き下ろす風は冷たいし、誰も助けてくれないし、景色は最悪だし、いいことは何もないよ。さすがにここまで来ると後悔している。
モルゲンロート

 
そろそろ夜明けだ。モルゲンロートに染まる沢の上部に目を奪われながら、爽やかな冷気を飲む。うーん、うまい!(てことあるわけないでしょ)
源流付近 9:00
  
やっと源流部あたりにを通過。崩壊場所を何
度も迂回する。筆者がうっかり足を滑らせ、転落しそうになる。反射的に大きな岩をガッシとつかみ、危うく滑落を免れる。軽い打撲で済んだのは
不幸中の幸いだった。更に、垂直に近いよじ登り登坂は続き、愚妻は言葉も失い恐怖におののいて歯をガチガチと合わせるだけだ。
やっと沢も最後  9:45

 
恐怖の急登は最後の最後まで我々を苦しめる。もう、グーの音も出ない。こてんぱにやられた感じ。ちょっとでも油断しようものならいつでも沢に転落する。緊張を持続するだけでホトホト疲れ果ててしまう。
ついに稜線に立つ  10:00

 4時間近くに及んだヌクビ沢との戦いにやっとケリ。相棒はその場にヘタヘタと座り込み、精も根も尽き果てた様子。大粒の冷や汗とともに血色もない。

 こんなに素敵な展望が待っていたというのに・・・
 稜線でしばらく休んでも、相棒の呼吸が元に戻らない。ここに荷物をデポして、割引岳を
往復することにする。相棒は「腰が痛い」と言い出す。初めての事だ。よほどヌクビ沢で参
ってしまったんだろう。でも、ここからは、雲上の楽園、稜線を気長に歩けばよい、と励ます。
割引岳(1,931m)  10:10

 必死の形相で割引(わりめき)岳山頂によじ登る。なんであんな苦しい登山道を選んだんだろう?初心者は絶対にこのルートを登るべきではない。と、反省しきり。
山座同定

 
当然のように360度の展望。越後三山が眼前に迫り、ぐるっと、苗場山、佐武流山、仙ノ倉山、巻機山と続くが、日本海は霞んでいるので確認できない。右は八海山(入道岳)

カシミールでのシミュレーション。仙ノ倉から苗場に続く

越後三山がどーんと連なって見える。
ま、一応記念撮影

 地図を引っ張り出して、しばらく山座同定を楽しむ。この後は、いよいよ目的の巻機山頂へ移動するのだ。少しは元気出たかな?全く弱気になっている。
巻機山へ向かう

15分ほど割引岳からの眺めを楽しみ、デポ地点へ戻る。相棒の呼吸は整ったものの、まだヨロヨロと歩いている。景色を楽しむ余裕はなさそう。

割引岳から巻機山方面 雲上の楽園を空中散歩。いやぁ、気分爽快。ソウカイ?
巻機山から割引岳(左)
 
一面の草紅葉が深まり行く秋を感じさせてくれる。

巻機山の池塘(右)
 
怪獣の足跡(カエル?)のような地塘が点在している。
割岳岳があんなに遠くに 10:40

 巻機山頂の標識が立つ分岐は人であふれかえっている。どうみてもピークではない。ピークまで30分と書いてある。しょうがない、早く行くか?重い腰を「よっこいしょ」。
着いたぞ??   11:15

 
「さぁ、ピークだ」、ガガガガーン、ここはなんと牛が岳(1,961m)の看板だ。とっくに巻機山のピークを通り過ぎている。よーくガイドブック(どこでもアウトドア=昭文社)を見ると、正確な地図とは違っている。「もう、絶対先には行かない」とむくれる。ついに、ドタッとその場に座り込んでしまった。ここで大休止にする。展望は、平ヶ岳、燧ヶ岳、至仏山、武尊山が追加され圧巻であるが、愚妻は食べ物も飲み物もノドを通らず、未だにゼイゼイと苦しそうに息をしているだけである。

カシミールでのシミュレーション。ピークハントした山々を眺められる。
引き返し  11:30

  食事もそこそこに下山開始。池糖を通り過ぎ、一面草紅葉のキツネ色を楽しみながら(私だけ?)分岐点に戻る。本当のピークはここだ。進入禁止なのに、堂々とくつろいでいるマナーのない登山者が多いこと。自然破壊者だ。
巻機山頂の標識  12:00
 
地図やガイドブックでは、御機屋となっている。井戸尾根を登ってくると、ここに到着する。どう見てもピークではない。しかし、信仰上ではここを山頂としてきたらしい。やはり、巻機山とはここら辺一帯の総称なんだな。優しいおじさんが、ツーショットの写真を撮ってくれた。
 まだ12時前だというのに、周りの登山者は我先にゾロゾロと下山している。一時間前は、この標識前は大混雑で、標識の前のベンチでは写真も撮れなかったが、今はもうガラガラ。それだけ下山に時間がかかると言うことか?


下山道は井戸尾根   12:15

 草紅葉に抱かれながら下山開始。山頂でゆっくりしようなどいうもくろみは崩れ、ズルズルと時間に押されている。長時間休憩できるような場所もなく、変な山だ。

  避難小屋で数分の休憩後、ニセ巻機山まで急ぐ。
前巻機(ニセ巻機山)  12:45
 
九合目の標識。井戸尾根を登ってくれば、ここが頂上と間違うという意味でニセ巻機山と呼ぶ。今日は天気がいいので、本当の巻機山が見えるが、荒天だったら、確かに山頂と間違えそう。

ニセ巻機山から本当の巻機山を望む。こうしてみれば本当になだらかな優しい山に見える。
今一度、割引岳からぐるっと見回して心のフィルムにしっかりと焼き付ける。
8合目   13:00

 今までの草紅葉と違って急にガレ場帯に入る。賽の河原といっても過言ではないだろう。
紅葉

 
巻機山の中腹あたりがちょうど紅葉の真っ最中。心ゆくまでダケカンバの赤に酔いしれる。
七合目  13:35

 広々とした台地状で、視界が開ける。振り返れば前巻機山の山頂らしきところが見える。気持ちよさそうに昼寝している人もいる。
延々と紅葉の中を下山する

 
山全体が真っ赤に燃えているようだ。遠くに割引岳が見える。あそこから降りてきたんだね。
ブナ林に入る

 
黄色に色づいたブナ林もきれいだ。
六号目展望台(1,564m)  14:00


 
一息入れよう、そろそろヒザがおかしくなってきた。ちょうどいいところに休憩場所があるもんだ。
あの沢を詰めたんだぞ

 天狗岩(ヌクビ沢)あたりが紅葉で真っ赤に染まっている。やっと綺麗な紅葉をじっくりと味わう。「あの沢を登ったなんて信じられな〜い」「そうだね、無我夢中で何もわからなかったんだね」。知らないということは恐ろしい。
五合目  14:45
 後続にドンドン抜かれながらもゆっくりと降りる。

四合目   15:15
 
ヒザはガクガク、ギシギシと悲鳴を上げている。まだ、高度差800mを降りないといけない。(来週の勝沼マラソンを前に故障しそう)
三合目  15:30

 いやはやどこまでこの下りは続くんだろう。僕の足はもう他人の者になっているよ。時計の高度計は、いつの間にか登山時点の700mを指しているのに。二合目、一合目は遠いのか?

 
登山口  15:50

 
いきなり”ポン”と登山口に飛び出してた。なんと、2合目から下がない?都合11時間の長〜い挑戦は終わった。身も心もズタズタに疲れた巻機山だった。アンケートの青年に5分も粘られダメを押される。

 この後、キャンプ場に戻りテントを撤収し、昨日と同じ17号線沿いの「街道の湯」に車を飛ばす。途中でビールを買い込み、風呂に入る前に飲んでから、ゆっくり風呂に入る。じわーっと、征服感が出てきて、露天風呂でストレッチすると体調も良くなって来る。しばらく休憩し、一気に埼玉までぶっとばす。



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