――― 酒は飲めどもXmas編 ―――
宿屋の一室・・・しかも団体部屋なんて借り切って、ルシフェル・ブラム・リギィ・所長・
フィアルそしてユディトの五人と一匹は柄にもなくクリスマスパーティなど決め込んでいた。
「なぁなぁ、オレもそのツマミ欲しい」
テーブルの端に置いてあり、ブラムと所長の独占状態になっていたキムチかわはぎに手を
伸ばしたのはリギィ。ブラムに補助され、ようやくありつく事が出来たものの、口の中に
放り込むなり辛い辛い〜〜≠ネどと大騒ぎをしている。
ルシフェルは手製の料理を次々とテーブルに運び、今はケーキを如何に平等に六等分するかに
奮闘中。
所長・ブラム・フィアルの大人三人組はいそいそと酒を酌み交わしている。
「折角だからドンペリをあけるのだ〜〜☆」
「じゃあコッチの芋焼酎もあけようぜ」
「先ほどお店の方に頂いた地酒も良いかと」
各々が一体何本目なのか分からない新たな酒瓶を持っては飛び切りの笑顔でそんなことを言う。
そしてユディトはご馳走にひたすら夢中、という風にテーブルの上を歩き回っている。
「はい、皆さん。ケーキが切れましたよ」
ようやく上手く切り分けることが出来たらしいルシフェルがやり遂げた≠ニいう様な満面の笑みを
浮かべ、四人と一匹に語りかける。
それぞれの手前に可愛らしい小皿に入れたケーキを置き、そして言う。
「さぁ、召し上がれ♪」
ルシフェルのニッコリ笑顔と共に、残りのメンバー達はやっと餌を与えられた獣のごとく勢いで
目の前のケーキを貪り始めた。
「〜〜〜〜〜 超ウマい!! 」
一口目を味わい、真っ先に感想を口にしたのはリギィ。ガツガツと平らげ、
一切れじゃ足りねーよぉ・・・≠ネどと残念そうに言っている。
ユディトは勿論酒に夢中になっていた大人三人も口々にルシフェルのケーキを賛美した。
「マジに美味しいよ。ルシ君のケーキ最高」
「このご馳走たちといいケーキといい・・・ルシフェルは絶対良いお嫁さんになれるのだ〜〜★☆」
「いつか作り方を教わりたいものです」
皆のストレートなほめ言葉に、ルシフェルは恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに微笑むのだった。
「もっと強い酒を持ってくるのだ〜〜」
二度目の酒盛りタイムを向かえ、所長は意気揚々としてソファから立ち上がった。
「オレもそれ飲む〜〜」
「貴方はやめた方が良いのでは・・? 」
リギィがフィアルの飲んでいたワインに手を伸ばす。17歳という年齢を気にしてか、
それとも単にリギィのおこちゃまっぷりからか、フィアルは怪訝そうな眼差しを向けつつ
それを止めようとするが・・・
「・・・んだよぉ、フィアルぅ〜。オレがガキらと思っへ馬鹿にしてるんらなぁ〜〜〜!! 」
時既に遅し。ワイングラスいっぱいに注いだ液体をグイッと一気に飲み干し、リギィは呂律の
回らない様子でそんな事を叫ぶ。
「良い飲みっぷりじゃねーか、リギィ」
その一部始終を見ていたほろ酔いブラムは上機嫌で言うが・・・
「ブラムさんまでそんな事言う・・・。あ、ユディトは飲んじゃダメですよ」
「きゅっ(>_<)」
お母さん的立場であるルシフェルは困惑しながら、ブラムのグラスを覗き込んでいたユディトを
制止した。
「お〜またせ〜〜なのだ〜〜〜〜♪」
スキップ交じりの足取りで、所長は両手に如何にもな高級感の漂うボトルを幾つも抱えてくる。
「お、出たな。ウォッカにジンに・・・あとはバーボンってとこか」
所長の手の内を見やり、ブラムの機嫌はますます良くなる。
「アルコール度数は・・・・・・・所長、それをまさかそのままで・・・お飲みに? 」
注ぐのだ〜〜≠ニ言われ・・・と言うより命令され、酒を手渡されたフィアルは聊か青ざめながら
所長に尋ねた。けれど所長はさも当然のことのようにキッパリと・・・
「当たり前なのだ。子供じゃあるまいし、割ったりなんかしないのだ」
なんて答えた。
「・・・っつーか、お前の体大丈夫なのか? ガキじゃん、今は」
そういえば、とブラムが問う。本当の年齢はともかく今は子供。流石に体に悪いのでは? と
思ったのだが・・・・
「大丈夫なのだ」
所長はこれまた何を今更≠ニ言う風にキッパリと答える。
「・・・根拠ねぇだろ・・」
項垂れるブラムだった。
「みんなあんまり飲みすぎちゃダメですよ〜? 」
ルシフェルが心配そうな表情をしつつ皆に注意を促す。けれどすっかり出来上がって
しまっている大人たちにそんなものが素直に聞き入れられるはずもなく・・・。
「だ〜いじょ〜ぶだって」
ヘラヘラと笑うブラムに他の三人も続く。
「・・・ホントかなぁ・・」
イマイチ不安を拭い取れないらしいルシフェルは困ったように呟くのだった。
「・・・そういえば、ルシフェルは飲まないのだ? 」
不意に所長が尋ねる。先ほどから早くも片付けに専念しており、話を振られるとは思って
いなかったルシフェルは少しばかりオロオロしながら答えた。
「え・・ぼ、僕は飲めませんから」
つまらないのだ・・・≠サうぼやきながら、所長は更に問いかける。
「弱いのだ? 」
「・・え、えぇ・・・まぁ」
ルシフェルはコクリと頷く。
「酔うとどうなるのだ? 」
興味津々・・・顔中からその意思が滲み出ているような表情を浮かべている所長。
「・・え? ・・えっと・・・」
(・・・ヤッベ・・)
酔うと大抵記憶の無くなってしまうルシフェルはただひたすら困惑するも・・・
「い、いいじゃねーか、別に。そんなことは」
ルシフェルが酔うとどうなるのか、唯一知っているブラムが慌てて話の転換を図った。
・・・が、そんな不自然な行動を所長が見逃すわけもなく・・・
「なんでブラムがそんなこと言うのだ〜? 」
「いや・・別に」
思いっきり怪訝な顔で尋ねられ、ブラムはフイッと目を逸らす。
それによって益々これは何かある≠ニ察したらしい所長は更にググイッと迫ってくる。
「気になるのだ〜〜」
「・・・・」
ブラムはただ黙って目を合わせないように努めるのみ・・・。
「あ、眠くなります」
必死に考え、ルシフェルがハッとしたように呟いた。すぐ寝てしまうから記憶がないのだ・・・
そんな風に思いついたらしい。
「眠くなるのだ? 」
「・・・まぁ、そう・・・そんな感じ」
たいそうがっかりしながらの所長に確認を施され、ブラムは嘘臭い笑みを浮かべつつ頷いた。
(・・それだけじゃねーんだけど・・・・なぁ・・)
よもやまさか本当のことが言えるはずもない・・・。必死になるブラムだった。
「・・・・・」
所長はイマイチ信用しきれないという風な表情を浮かべている。
そして、彼は行動を起こした。
「フィアル、やるのだ」
ジロリと隣に座っているフィアルを見やり、他のメンバーには聞こえないように呟く。
フィアルは少しばかり困ったような顔をした後ですみません・・・≠ニ心の中で何度も言いながら
自分の丁度前に座ったルシフェルのグラスと自分のもの・・・つまりはただのジュースと
アルコール度数のハンパでない酒をすり替えた。
「・・・・っ? 」
何も知らないルシフェルは普通な感覚でそれを飲み干す。その瞬間噴出しそうになってしまったのを
所長は見逃さなかった。そしてほくそえむ。
それから間もなくして・・・
「・・ルシ君? 」
急に黙ってしまったルシフェルを心配したブラムが尋ねる。ルシフェルは何処となく潤んだ瞳を
こちらに向け、その頬は高揚している。更に極めつけとばかりにはふっっと大きな欠伸を一つ、零した。
(・・・まさか・・・)
青ざめつつ、ルシフェルの飲んでいたらしいグラスを手に取ってみる。すると案の定それはバッチリなほどの
アルコール臭が・・・。
「・・ぅにぃ・・・」
とろんとした瞳を必死に擦るルシフェル。それはもう真剣な眼差しでじぃ〜〜〜っと観察していた所長は
顎に手をやりふむ・・≠ニ頷いた。
「やっぱりルシフェルは酔うと眠くなるのだ・・・」
つまらないのだ〜〜≠ニ所長は言うが・・・
(・・・眠くなるだけならいいんだけどよ・・・)
深々としたため息を零すブラム。酒を口に運びつつ、徐々にルシフェルから離れようともしてみる。
・・・してみるのだが・・
「・・ん・・・ゃあ・・だ・・」
それに気づいたルシフェルがそれを止めるためにギュムッと抱きついてきた。
一緒にいなきゃ嫌≠ニか何とか言いながら、それはもう甘い甘い声を上げてブラムに擦り寄る。
それを目の当たりにした所長はおろかフィアル、リギィ、ユディトまでもが愕然としているのが
伝わってきた。
(・・・甘え上戸なんだよなぁ・・・ルシ君は・・)
ブラムは密かに頭を抱え込む。くっついてきてくれるのは嬉しいし、何よりもルシフェルが
甘えてくるのは自分にだけというのが良い。良いのだが・・・
「・・ね、ぎゅ〜〜〜っは? 」
ここまで人目もはばからないともなると流石に・・素直に喜ぶわけにもいかないだろう。
ブラムからも抱きしめ返すことを強請るルシフェルに困ったような苦笑いをしつつ、ブラムは
そんな事を思うのだった。
「「「・・・・・」」」
沈黙を保つ所長・フィアル・リギィの三人+ショックが隠しきれないらしく、ソファの隅っこで
いじけているユディト。
ブラムは深いため息を再度漏らし、なおも甘えてくるルシフェルの髪を優しく撫でた。
そして言う。
「お部屋まで連れてって上げるから・・・ほら、おいで」
「・・はぁ〜い、です」
ルシフェルはこれまた飛び切りの甘い声で良いお返事をし、ブラムの腕の中に納まった。
慣れた様子でお姫様抱っこをし、ブラムはルシフェルの部屋へと向かう。
「・・・ビデオ・・録っておけばよかったのだ・・・」
ポツリ。所長が言う。けれどその表情は、口調とは全く持って違った単なる驚愕を表していた。
「ルシフェル・・・別人みたいだった・・」
リギィもそれに続く。
信じられない光景を目の当たりにした三人は、今後一切この事を口にしなかったという・・・。
――― Merry Xmas.
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------
ルシ君酒を飲む、クリスマス編でした。
みんなでパーティ、と言うことで。和気あいあいと。ホントはまだ続きがあるんですが・・・
それはまた、次回更新予定と言うことで・・・。