■民族学者:F・クロード・D■

それぞれの思惑を載せた一夜が過ぎ、真っ暗だった空がだんだんと明らみ始めた頃。

旅人専門の宿からなにやら大きな刀を持った男ととても旅人とは思えない白衣の男が姿を現した。

ライラディアスの指輪¢{索隊(笑):ブラムシヴァーズとフィアルである。

「本当にユアン・リヴァースさん達に何も言わなくて良いのですか?」

かなりのヒソヒソ声で問いかけるフィアル。当然ともいえるそれに、ブラムは少しばかりバツの悪そうな表情で答えた。

「指輪探しに行く、なんつったら絶対ぇ所長とかリギィが面白がってついてくるだろ?だいたい、ルシ君に渡すための指輪だってのに

 本人に言えるかよ・・」

フィアルはまぁ、それもそうか≠ニ頷く。ブラムの話ではとりあえず

ちょっと野暮用。すぐ戻るよん♪  ブラムさんより

という置手紙をしてきたらしいし、それならばあのブラムの事に関しては極度に心配性なルシフェルも大丈夫だろうと一安心。

二人共通の友人として、二人から御互いの事についてしょっちゅう≠ニいって良いほどに相談を持ち掛けられているフィアルとしては

どんな細かい事にも気が抜けず・・・もはや仲人のような心境で必死なのだった。

              

「で、どっから探してみる?」

森の入り口に差し掛かった所で、昨夜話し合うときに散々開いていた地図と指輪について書かれていた古書を広げつつブラムが尋ねる。

やっぱフィラディーヌの泉から行ってみるか?≠ニの提案に、フィアルもコクリと頷いた。

一口に森の中≠ニ言ってもリングファット領地第二地区で、しかもその中で忘れられた村≠ニ名の付くほどド田舎であるフィガータの

近隣にある森となれば、旅人とは言え比較的都会からやって来たブラムとフィアルには到底想像すら出来ないほど広大で危険も大きい。

その中で当ても無くウロウロと探し回るのは自ら死にに行くようなもの・・・いや、森の動物たちの餌になりに行く様なものと言えるだろう。

可能性は低くとも、伝説に関連した場所から当たってみる・・・二人の判断は賢明だった。

                

              

「そういやぁ・・」

フィラディーヌの泉に向かう道中、ブラムは不意に呟く。一体なんだろうと思いつつフィアルが顔を上げてみると、なにやら照れくさそうな

ブラムの表情。フィアルは?≠浮かべた。

「サンキュな。あの本・・」

「・・・・・?」

まったく身に覚えのないことで礼を言われ、フィアルは更に首を傾げる。ブラムは尚も上機嫌に続けた。

「所長に託けてお前が貸してくれたやつだよ。≪未知感情理論≫っていうF・クロード・Dって奴が書いた本」

「・・・・・(驚)」

思わず自分の耳を疑ったフィアルだったが、所長の名が出てきた事でアッサリと謎は解けた。またあの男は勝手にフィアルの荷物をあさくり、

勝手に持ち出した本をブラムに嘘をついてまで読ませたのだ。

              

≪未知感情理論≫・・・それは流浪の民についてある民族学者のタマゴが書いた本であり、流浪の民には恋愛感情が無い≠ニいう今までの

最も信憑性の高いとされてきた説を真っ向から否定したものであった。この世に魔力を持たない者は存在しない≠ニいう説を柱にし、

流浪の民は恋愛感情を持たないのではなく知らないだけに過ぎずこれから知りゆくことも十分に可能である≠ニ初めて言ってのけたのが

F・クロード・D。

それを読んだおかげでブラムは自信を持ったのだと言う。だから今回の想いを伝えてみようと思う≠ネどという結論に至ったのだと。

             

「本読んだくれーで自信持つのもどうかと思うんだけどよ。・・・でもまぁ・・なんつーか、すっげぇ慰めになったっつーか・・・。

 俺はこいつの説を信じてみようって気になったんだ」

「・・・・・・・・」

ブラムは嬉しそうに微笑んだ。本気でフィアルがブラムのために貸してやったものだと思っているらしい。フィアルは無表情で俯いた。

・・・・いや、無表情を必死に保って・・と言っておこう。

少し考えれば分かる事だ。フィアルが本当にそれをブラムに貸そうと思ったのならわざわざ所長なんかに託ける訳が無い。

さらに所長が善意で何か行動を起こそうとするはずが無い。自分の上司をココまで言うのもどうかと思うが・・・敢えて声を大にして言おう。

所長が自ら動こうとする時は絶対に思いついた何かしらの嫌がらせを実行する時だけだ、と。

ちなみに今回のケースの場合、嫌がらせの対象はブラムではない。勿論無関係のルシフェルでもない。

いつも所長の行動を窘め続け、最近生意気なのだ〜〜(怒)≠ニ拗ねられ気味のフィアルである。

「民族学者なんてロクでもねぇ奴しかいねぇと思ってた(いっつも血塗られた民のことをボロクソに書かれるから)けど、

 コイツは好きだな。俺」

「・・・・・(照)」

何の臆面も無くそんな事を言ってくれるブラムにフィアルはただただ黙り込んでいた。

いつもは鋭い彼が、今回ばかりは聊か鈍い事に大感謝である。

             

  F・クロード・D

フィアル・C・ディブロン

よく考えてみれば分かりそうなものなのに・・・。

            

「・・こ、この先がフィラディーヌの泉ですよ」

フィアルは誤魔化すように、少しばかり強引な話題の軌道修正をした。

「マジ?よっしゃ、気合入れて探そうぜ」

ブラムもそれに乗ってくれたため、ホッと胸を撫で下ろすフィアルだった。

ひっそりと覚えとけよ、あの野郎・・≠ネどと所長討伐計画を立てながら・・・・。

                        

                          

■悪巧み IN お化け退治■

一方コチラはルシフェルサイド。昨夜依頼された幽霊退治に向かう直前である。

なぜ直前なのかと言うと・・・・

「なぁなぁなぁ、やっぱやめようぜ?」

「くぃゆいゆ〜〜〜(>_<)」

リギィ&ユディトのお子様コンビが、宿の入り口にくっついたまま駄々をこねて離れないのだ。

「今更何言ってるのだ。依頼を受けたのだからもう覚悟を決めるのだ〜☆」

そんな二人を窘めつつ、所長はその身体の倍はあろうかと言う大きさの荷物を背負う。彼なりに何か準備をしたらしい・・。

「何なら二人で留守番してますか?今回は賞金稼ぎではなくて幽霊退治ですから、僕達だけでも十分だと思いますし」

「いいのか!?」

「きゅいゆっ(V)o¥o(V)

所長とは正反対に、軽装で出かけようとしているルシフェルが苦笑交じりに提案する。

願っても無いその言葉に、リギィとユディトは大喜びで頷こうとするが・・・

「ダ〜メ、なのだ」

ぷく〜〜っとホッペを膨らませて拗ねフェイスの所長が大反対。ルシフェルにも自分達の実力を過信するな、と言って聞かせる。

「たかが幽霊退治だ、なんて考えてたら怪我をするのだ」

ブラムもフィアルもいないのだから余計にだ≠ニ付け足しをし、表向きはルシフェルを心配しているかのような発言だが・・・・

彼の場合、単に恐怖に慄いているリギィとユディトを面白がりたいだけなのだろう。

悪巧みに全生命力を注ぎ込んでいる彼の迫真の演技はまだ続く。

「リギィ、ユディト!!お前達はルシフェルと助け合おうと言う気が無いのだっ!?ブラムやフィアルがなんだか知らないけどいない今こそ

 お前達がルシフェルの手助けをしなければ、なのだ!!幽霊が怖いと言う理由で逃げたりしたら、我々の仲間として失格なのだ!!」

ビシッとお子様コンビを指差しながらの所長の力説に、その真意が掴めてしまったルシフェルは苦笑いをしているが・・・

単純なリギィとユディトはすっかり騙されたらしく・・・

「オレ頑張るっ!!」

「くー\(^o^)/」

俄然やる気を取り戻し、意気揚々とルシフェルの手を取った。

「オレ、ブラム達の分まで頑張るぞ」

「くぃっ<(`^´)>」

「あはは・・・頑張ってクダサイ」

ルシフェルはただ困ったように微笑むのだった。

                

ようやく出発をする事が出来た事に安堵したのも束の間、ルシフェルは不安げに所長を振り向く。

「・・?どうしたのだ?」

本人は至って普通。あっけらかんとした表情でルシフェルを見つめ返しているが・・・

「・・・あの・・それ・・」

先ほどからずっとうぃんうぃんうぃん、ゴゴゴゴゴゴ≠ネどと妙な音が聞こえてくる所長の背負っている荷物を気に留めないで

いられる訳も無く・・。ルシフェルはオロオロしながらそれを指差した。

「コレがなんなのだ?」

所長はまたもポケッとして聞き返す。そのわざとらしいほどに無邪気な表情を見せられ、ルシフェルは確信した。

背負っている荷物は絶対に良からぬモノだ、と。そしてこの男はまた何か悪巧みをしているのだ、と。

「いいえ。何でもないです」

触らぬ神にたたりなし・・・そう言わんばかりに、ルシフェルは力の限りのニッコリ笑顔を浮かべる。

「ふふふふふ、なのだ」

けれどその直後聞こえた所長の悪魔のような笑い声は聞き逃せないのだった。

(・・・何もありませんように・・)

無駄ともいえる祈りを捧げつつ、ルシフェルは先を歩くリギィ達に追いつくべくその歩調を速めた。

               

                

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