■悪巧みの達人 その2■

「所長」

寮を出た所長は本館からこちらに向かってきている意外な人影に呼び止められ、その目を丸くした。

「・・・・フィアル・・・どうしたのだ?珍しいのだ、お前がこっちに来ているなんて。 何か用でもあるのだ?」

先程ブラムと所長との話にもあったようにフィアルがこの寮に来る事などほとんど無い。そのため所長のこの言葉も当然のものと思えるが・・・

「所長がまた大暴れしてご迷惑をかけているのではないかと思いまして」

フィアルのこの言い分もまた当然のことなのであったりする。

「・・・・・・お前なんか大嫌いなのだ」

「光栄です」

拗ねながらフィアルにそんな事をいう所長だが、フィアルはキッパリとそう言い放った。

「・・・ホントにフィアルは嫌な奴なのだ」

所長が不貞腐れながらフィアルの白衣に悪戯をするが、フィアルは思いがけない台詞を口にする。

「先程の所長よりはマシだと自負しています。まだ確信も無い説であそこまで彼を追い詰 める必要性は無いのではないですか?私には理解しかねます」

どうやらフィアルは所長ブラムのやり取りを聞いていたらしい。確信も無い説≠ニ言っているように、フィアルは流浪の民に恋愛感情が

無いという説を鵜呑みにはしていない。それどころかそれに反するような自説も持っている。だからこそ、フィアルは所長の言葉に反感を覚えたのだ。

「・・・私はあくまでも信憑性が高い説≠ニして教えてやったに過ぎない。それによってあの男がどう言った結論を出すのか・・・・楽しみだろう?」

「・・・また所長の悪い癖が出たようですね・・」

真剣な眼差しとなった所長の言葉に、フィアルは微かに眉を顰めながら溜息をついた。それでも所長は尚楽しげな悪魔の笑みを浮かべながら続ける。

「お前の研究のためにもなるだろう・・・。流浪の民は恋愛感情も持たないのではなく知らないだけに過ぎない≠サれがお前の持論だったはずだ」

「・・・それは・・」

「恋愛感情を知らない@ャ浪の民と最も愛欲に深いと言われる血塗られた民・・・面白い組み合わせだと思わないか?」

所長はブラムとルシフェルの泊まっている部屋の方を見上げ、腕を組んでフィアルに同意を求めた。一方フィアルは興味深い≠ニ笑みを

浮かべる所長の姿に長年の経験からなにやら不安を感じ始めるのだった。所長がこのような時は必ず、よからぬ事を考えているのだ。

「・・・・・・やはり貴方は悪趣味極まりない・・」

どんな台詞が飛び出すのだろうかとフィアルは恐る恐る呟く。すると、所長はフィアルの予想通りの台詞を遂に口にした。

「面白い事を思いついた。研究所に全員を集めろ」

「・・・・は」

こうなってしまえば、もはや所長は誰にも止められない。それを知っているフィアルは少しばかり青ざめながらも所長の言葉に従うしかないのだった。

 

■ブラムの迷いとルシフェルの想い■
 

所長とフィアルがそんなやり取りをしている頃、部屋に戻ったブラムはベッドに横たわり、じゃれ付いてくるユディトと戯れながらも

先程の所長の言葉を気にしていた。

(・・・思っても報われない相手=E・・か・・・)

ルシフェルに恋愛感情が無いということを信じきったわけではない。・・・しかしそれでも所長の最後の言葉はブラムの中に最も引っかかっていた。

「きゅ〜い(・・?」

深刻な表情で考え込んでいるブラムが心配になったのか、高い高いをされて喜んでいたユディトが突然ブラムの顔を覗き込んで来る。

「・・・あ・・・ごめんごめん。お兄さんの顔怖かったかな〜?」

「くきゅ・・・(^_^;)」

慌てて笑顔を作って見せるブラムだが、ユディトは尚も・・・まるでブラムを元気付けているかのように頬をペチペチと叩く。

(・・・・うわぁ・・・・慰められてるよ、俺・・・・・・・・・・・どうしよ・・・)

ユディトのあまりに必死な態度にブラムは自分がどれ程悩み込んでいたのかを知り、半ば情けなくなりながら深々と溜息をついた。

「ユディト、あんまりじゃれ付いてたらブラムさん疲れちゃいますよ?」

うなだれているブラムを見てそう思ったのか、今まで地図を見ながらリギィと話していたルシフェルがブラムのベッドに腰掛けてくる。

部屋に戻ってからというもの、所長の言葉を気にするあまりルシフェルを避けるようにしていたブラムは思わずその身を硬くし、

聊か気まずいような面持ちで体を起こした。

(・・・・・・・・ルシ君・・・)

ルシフェルはいつも通り、ほのぼのとした雰囲気でブラムにくっついたままでいるユディトを撫でている。

・・・当然のことながらブラムの穏やかでない心境など知るよしも無いのだ。

「ブラムずるいぞ、オレもユディトと遊ぶ〜〜っ!!」

「うわっ!!・・・だから、いっつもいっつも俺ごと飛びついてくるんじゃねーっつってんじゃねーか!!」

ブラムとルシフェルが楽しくユディトとじゃれ付いているようにでも見えたのか・・・少しばかり拗ねたようなリギィがベッドにダイブしてきた。

当然抗議するブラムだが当の本人は一切気にも留めることなくユディトと戯れ始める。

「きゅぅ〜〜〜(^◇^)」

お世辞でも大きいとはいえないベッドの上で暴れるリギィとユディトを後目に、置いてけぼりになってしまったルシフェルとブラムの間には

何気なく気まずい空気が流れていた。

・・・といっても、おそらくそう思っているのはブラムだけなのだが・・。その証拠に、ルシフェルはやはり普段どおりにブラムに話題をふってくる。

「あれだけ働いた後なのに・・・元気ですよね・・あの二人(?)は」

「・・・・そう・・だね」

ブラムが視線をルシフェルから逃がしながら返事をすると、ルシフェルは聊か不思議そうな表情を浮かべながらも先程リギィと二人で見ていた地図を

ブラムに示して新たな話題を振った。

「あの・・・・これからのルートの事なんですけど・・・この地図の・・・」

「・・・・・・・・」

一応地図に視線を落したものの、ルシフェルの言葉にあまり反応を見せないブラムを流石にすんなりとは流せなかったらしく、ルシフェルは心配そうに

ブラムの顔を覗き込んできた。

「・・・・ブラムさん?・・・・・どうしたんですか?」

「・・・ごめん・・・適当でいいから決めといて。俺、今日はもう寝たいし・・」

ブラムは不安そうなルシフェルに視線を合わせることなく地図をルシフェルの手に持たせるような仕草をしてそんな事をいい放つ。するとルシフェルは心なしか

しゅん≠ニしてしまったように地図をたたみ、ベッドから立ち上がった。

「そうですよね、ごめんなさい。・・・・・ブラムさん疲れてるのに僕、全然気を使わなくて・・・。じゃあ・・あの・・これは僕が

考えておきますから。・・・・・お休みなさい」

「おやすみ」

じゃれ付き続けてベッドから落ち、床に転がっていたユディトとリギィをよけながらソファへと戻るルシフェルの姿を一瞥したブラムは

掛け布団を頭まで掛けてそれに背を向けた。

(・・・・・・・・・なにやってんだろーな・・・俺・・・マジ情けねぇかも・・)

ルシフェルが悪いわけではないのに、どう接すれば良いのか分からない・・・・いや、普通に接すればそれで良いのだということも分かっている・・・・それなのに

身勝手な迷いで素っ気無い態度をとってしまった。所長の言葉一つで揺らいでしまう・・・ブラムは自分の不甲斐無さに呆れる事しか出来なかった。

「あれー?・・・なんだよ、ブラムもう寝ちゃったのか?」

「きゅい(>_<)」

ドタバタと暴れていたリギィ&ユディトだが、ルシフェルとブラムが離れた事に気付くとそのまま床をごろごろと転がってルシフェルのもとへ行き、

そんな事を尋ねる。

「疲れてるんだそうです。だから、もうちょっと静かにしてあげましょうね」

ルシフェルはテーブルに地図を広げながらブラムについて説明をした。大声でなんでなんでー?≠ネどと騒いでいるリギィにさりげない注意を促すのも忘れずに。

しかしリギィは普段のブラムの常人では考えられないほどの体力の持ち主であることを知っているためか怪訝な顔でベッドに歩み寄る。そして何を言うかと思えば・・・

「・・・・・疲れたって・・・ブラムなのにぃ〜〜?ホントかよぉ。・・・そんな事言ってブラムさ、ルシフェルが所長に独占されて

いつもみたいに抱きつけなかったからムカついて不貞寝してんじゃねぇの?」

(・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?)

この発言には流石のブラムも黙っていられるはずもない。

「・・・誰がだよ!?てめぇみたいなガキと一緒にすんじゃねぇっての」

「いってぇ!!」

リギィの帽子を鷲掴みにして取りあげ、露わになった耳を千切れない程度に力任せに引っ張って叱責する。

「あ・・・ブラムさん・・・ごめんなさい。僕達うるさかっ・・・」

ルシフェルは自分達(主にリギィ)がブラムの睡眠の妨げになってしまったのだろうと思ったらしく、ぎゃあぎゃあと怒鳴りあっている二人に歩み寄るが・・・・

「やっぱ図星だーーーーっ!ヤキモチなのなっ!!」

珍しくもリギィの言葉にムキになるブラムをからかう事にすっかり夢中のリギィの声にかき消されてしまう。

「だからっ!!そうじゃねぇっていってんじゃねーかっ!!」

「ユディト、俺たち部屋に戻ろうぜ〜。じゃ、おやすみぃ」

「・・・・・・・・(怒)」

必死に否定するブラムを完全に楽しむように、リギィはルンルンでユディトを連れて部屋へと戻っていった。残されたブラムとルシフェルの気まずい雰囲気は

もはや言いようの無いものとなってしまうのだった。

(・・・・・あのクソガキ・・・)

「・・・あの、ブラムさん」

恨みがましそうにリギィの出て行った扉をにらみつけているブラムに、ルシフェルは今度はベッドに腰掛けることなく遠慮がちに話しかけてくる。

「・・・・・・・ん・・?」

何を言われるのだろうかとブラムが冷静を装いながらルシフェルに視線をずらし、返事をするとルシフェルは少しばかり言い辛そうに言葉を続けた。

「・・・・リギィが言ってた事、ホントですか?」

・・・それはつまり、本当にブラムの不機嫌であった理由がルシフェルに抱きつけなかったからなのか、ということであり・・・。

「・・・・・・・・・いや・・・あの、俺は・・」

ブラムは珍しくも照れ≠ニ焦り=Aそして困惑≠覚え、慌てて否定を試みるが・・・

「・・・・あの・・ブラムさんを膝に乗せることは(サイズ的に)出来ませんけど・・・膝枕で良かったら・・・」

「・・・・・へ?」

ルシフェルがにっこり笑顔でそんな申し出をしてきたため、ブラムは一瞬固まった。

(・・・・膝枕?・・・・ルシ君が?・・・・・俺に?・・・・してくれんの?・・・・マジで?)

「それじゃダメでしょうか?」

ルシフェルはあくまでも厚意として言ってくれているらしい。ブラムが返事を出来ないでいると再びしゅん≠ニして尋ねてくる。折角のチャンスの前には

ブラムの一時の迷いも吹っ飛んだ。

「・・・・・・・・あ、いや・・・あの・・・・・・・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・・」

「はい」

ブラムがしどろもどろしながらも膝枕してほしいです≠ニいう意志を伝えると、ルシフェルはどこかホッとしたような表情になってブラムのベッドに乗ってきた。

(・・・・・うっわぁ・・・・・・・・恥ず・・・)

枕をどけ、その場所にちょこんと座ったルシフェルの膝に、ブラムは緊張しながらゆっくりと頭を置く。ただそのままの態勢でいるとブラムを見つめるルシフェルと

ひたすら目が合ってしまうし、かといって横を向くとルシフェルの柔らかな太腿の感触が頬に直に感じられてしまう。・・・その所為でブラムは落ち着かない様子で

視線を泳がせていた。

「ブラムさんって・・・本当にくっつくの好きなんですねぇ・・」

「・・・うん・・・・・まぁ・・・」

だからといって別に抱きつけなかったからといって怒るほどではない・・・ブラムはそう思いながらもとりあえずルシフェルの言葉に頷く。

(・・・・ルシ君のこの辺のニブさとかも・・・・所長の言ってた事と照らし合わせれば納得もいくんだよな・・・)

ブラムは不意に所長の言葉を思い出していた。新月の晩のまるで口説いているかのようなブラムの言動にも、

ソフィアに手を出されかけていたのにブラムがブチ切れた理由も、もしもルシフェルに恋愛感情があるならばきっと気にかけるに違いない。

それがないことから考えてもやはり所長の言っていた事は本当である可能性が高いのではないか・・・ブラムはそんな風に考え始めていたのだ。

「・・・でも・・どうしてリギィとか・・・・・他の人にはくっつかないんですか?」

「それは・・ルシ君が・・・」

(ルシ君が好きだから・・・・って・・・・・分かんねぇかな・・)

ルシフェルの突然の疑問に、ブラムはおもわず本音を言いかけて言葉を飲み込んだ。自分はただ人に触れるのが好きなのではなく、

ルシフェルに触れたいのだと・・・・その気持ちはルシフェルにはおそらく伝わらない・・・それは一種の諦めだった。

しかし、ブラムはルシフェルの意外な言葉によりその諦めを払拭する事になる。

「・・・・・・僕ね、ブラムさんに出会うまで・・・こんな風に人と触れ合った事って無くって・・・・。

だから最初はブラムさんにギュッてされるのとか・・・・・・・・とっても戸惑いました」

「・・・・・・・・・・・・・すみません」

戸惑った≠ニいうルシフェルの素直な発言に、もしや責められているのだろうかとブラムは落ち込み気味で謝るが・・・ルシフェルは

そんなブラムの髪にそっと触れて笑みを零すと更に続けた。

「でもね、最近はもうそれが当たり前になってて・・・・。こんな風にする事が、ブラムさんと一緒にいる事の証明みたいな気がして

・・・・なんていうか・・嬉しいって思い始めたんです。・・・・だから・・」

・・・だから・・・その言葉の後ルシフェルは口ごもってしまったが、その後に何が続くのかなどブラムにはもはや関係ない。

迷いを抱えていたブラムの気持ちに踏ん切りをつけさせるには十分すぎる台詞だったのだ。

「・・・・・・・・やっぱ・・・」

(敵わねぇなぁ・・・)

ブラムはそんな事を思いながらルシフェルの細い腰に力を込めて抱きつく。

「ルシ君可愛いっ!!」

「・・・・ブラムさんっ!」

ルシフェルに膝枕をされている状態のまま擦り寄るブラムに、ルシフェルも困惑したような声を上げるが当然ブラムはそれをやめようとしない。

(ルシ君に恋愛感情が有るか無いかなんて・・・・・・ンなもん、この際どーだっていい・・)

思いがけなく発せられたルシフェルの言葉を素直に嬉しいと感じた。恋愛感情が無い・・・それの真偽は分からなくとも、今のルシフェルの言葉は

間違いなくブラムへの感情の変化を意味するのだ・・・・その感情がたとえ恋愛感情でないとしても・・・。

・・・・それは間違いなく、ルシフェルと自分の距離が縮まったということで・・・・。

「は〜ぁ、太腿すっげぇスベスベ♪」

「もぉ・・くすぐったいですってばぁ・・」

ルシフェルが太腿が見えてしまうほど短いズボンを穿いていたのをいい事に、ブラムは遠慮することなくルシフェルの太腿の感触を楽しむ。

・・・所長が触っていたことを余程気にしていたようだ・・・。

(・・・・・普通よりちょーーーーーっとニブイだけ・・・・・って、そんくらいに思っとけば大丈夫だろ・・・)

やはり少しばかりの不安は残るものの、ブラムは凄まじいほどの開き直りを見せるのだった。

「ブラムさんっ!ホントにくすぐったいからダメですっ!!」

真っ赤な顔をしたルシフェルの困惑の声だけが響き、その夜は静かに更けていった。

 

■そして悪巧みは続く・・・■

「ブラムさん、早く」

「んー、すぐ行くよ」

翌朝、相変わらず早起きのルシフェルと例によって例のごとく起こされたブラムは旅立ちの準備を進めていた。

「・・・・ね、それよかリギィ達起きてんの?」

「えぇ。珍しく朝早くから走ってくるって起きてましたよ。ユディトも一緒に行ったみたいですし。とっくに表で待ってますよ」

「へぇ・・・めっずらし」

何気ない会話をしながら手際よく準備を進め、慌しく部屋の整備を済ませ、寮を出る。すると・・・

「おはようございます」

出口から1mすらないであろう近さの所にフィアルが立ち尽くしている。しかもルシフェルとブラムが出てきた瞬間に礼儀正しく挨拶をしてきた。

「・・・お、おはようございます」

「・・・ども」

少し・・いやかなり驚くのとともに、一体いつから待機していたんだろう、という疑問を抱きつつとりあえず律儀に挨拶を返す二人だった。

「・・・・・あのぉ・・・一応所長さんにご挨拶をしておきたいとも思うのですが・・・こんな時間ですし、かえってご迷惑でしょうか?」

さらに律儀なルシフェルがフィアルにそんな事を言うと、フィアルは思いがけないにも程がある、恐ろしい台詞を口にする。

「その心配は要りません。私も所長も、とっくに旅立ちの準備は済ませておりますゆえ」

「・・・・・・・・・・・・・はい?」

ルシフェル、ブラムは呆気に取られるも、よく見ると確かにフィアルが大きな荷物を持っている事に気付いた・・・。

「・・・・・ねぇ、ブラムさん。・・・・どういう・・意味だと思いますか?」

「・・・さぁ・・・ねぇ」

フィアルがツカツカと歩いていくのにゆっくりと付いていきながら、ルシフェルとブラムは引きつりながらそんなやり取りをする。そして、

行き着いた先には既に事情を知っているらしいリギィ、ユディトそして旅立ちルックの所長が三人を待っていた。

「おせーぞ」

「くきゅっ<(`^´)>」

「待ってたのだ〜〜〜〜〜〜☆」

元気いっぱい、という風にこちらに向かって手をふるお子様三人に、ルシフェルとブラムはうなだれた。フィアルも聊か呆れ気味のようだ。

「・・・・見送り・・・じゃあ・・ないみたいですよね」

「・・・・・・・・・マジっすか・・」

そんな二人の意見を後目に、所長は研究所の職員に別れを告げ始めた。

「それでは行ってくるのだ☆後の事は所長代理のめぎゅに全部任せるから安心して働くのだぞ〜〜〜〜」

「まかされたじぇ♪めぎゅがこの研究所をもりたててゆくから安心してイッテラッサイ。」

割と安直な別れシーンである・・・。

「・・僕達の意思って・・・どうでもいいんでしょうか・・?」

「一気に五人と一匹旅か・・・・」

二人がそんな事をポツリと呟くものの・・・

「ほらぁ、行くのだー」

「行こうぜ」

「きゅヽ(^o^)丿」

「・・・・・・・・(コクリ)」

それぞれはそれぞれなりにやる気満々で旅立ちに意気込んでいるらしい・・・。やはり主人公二人は蔑ろにされている・・・。

「あの・・所長さ・・」

「これからよろしくなのだーーー♪」

ルシフェルがルンルンで町を出ようとする所長に近づくと、凄まじいほどの勢いでしがみ付いて来た。

「・・・・・・は、はい・・」

ルシフェルは聊かオロオロとしながらも抵抗するわけでもなく所長に返事をする。・・・・それを見て穏やかでいられないのはやはり・・・

「俺の<泣V君に触んなって言ってんだろーが!!」

ブラムだった。

「嫌なのだ〜〜〜〜っ!!」

「やかましいっ!!」

ルシフェルの足にしがみ付く所長を力任せに引き剥がそうとするブラムに、それでも尚懸命にルシフェルに擦り寄る所長。そして一人困っているルシフェル。

「三人とも朝から元気なのな〜」

そんな三人のやり取りを見ながらリギィが呟く。お前には言われたくないだろう、そう思っているのだろうか・・フィアルは少しばかり怪訝な表情でリギィを見ている。

「きゅぅ〜ヽ(^o^)丿」

何やら楽しげなユディトの掛け声とともに、一行は町を出発するのだった。そしてようやくルシフェルから離れた所長はブラムに歩み寄り、

他の誰にも聞こえないような声で呟く。

「・・・・・・私のアドバイスは聞き入れなかったということか・・」

「当たり前」

ブラムは所長の質問にその一言で答えると、すぐに前方を歩いていたルシフェルに近づき、その肩を抱いた。

何があっても諦めてたまるかよ≠ニ所長に向かって声を出さずに言いながら。そんな様子を見た所長は、その傍らにいたフィアルに確信的な笑みを向け、言った。

「・・・フィアル、これから・・・いい研究になるぞ。気を抜くなよ」

フィアルはブラムとルシフェルを一瞥した後で、深い溜息をつきながらも所長に従うような返事をするのだった。所長の補佐になった以上、その悪巧みの片棒を

担ぐのはもはや宿命なのだと・・・彼は諦めているのかもしれない。

「承知いたしております」

 

こうして・・・一行の旅は始まる。ルシフェルとブラムは賞金稼ぎとして・・・そして自分達の目的のため、リギィは元の体に戻るため、所長とフィアルは特殊な

シュアラム草を探すため・・・というよりルシフェルとブラムの行く末を見守るためか・・・それぞれはそれぞれの違う目的のために集った。

彼らの旅がこれからどれ程続いて行くのか・・・そしてどんな事が起こっていくのか・・・それは誰にもわからない。

ただ一つ確かな事は・・・彼らは自分の何か≠見つけられるだろうという事。彼らの今まだ抜け出せないでいる暗闇を、美しい空に変えてくれる彼ら一人一人の

何か≠ノ・・・きっとこの旅で出会える・・・・きっと・・・いつか。

          

それを見つける日を彼らが迎えるのがいつになるのか、それまでにどんな事が

起こるのか・・・それはやはり・・・誰も知らない・・・・・・・誰にも分かることは無い・・・・。

 

 

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