■不審な研究所…■
「・・・・何が・・・あるんでしょうか?」
研究所の前に着いたルシフェル達は先ほどの店員の言葉が
気になってしょうがない状態だった。
「一見すると普通だよね」
次に口を開いたのはブラム。・・確かにこの研究所は真っ白なフェンスに囲まれ、
これまた真っ白なコンクリートの壁でできた角ばった建物で・・・・
別にコレは変だ、などという点はない。
「薬品くさいし・・・ちゃんと研究所っぽいぞ」
リギィも自分の鼻をヒクヒクさせながら顔を顰めてそんな事を言う。
「きゅぃゆ〜(>_<)」
ユディトはその薬品の匂いが嫌いらしく、ルシフェルの懐に潜り込んでしまった。
――――――――『スィルヴァローネ研究所御用の方はこのボタンを押してください』――――――――
(・・・・・・ボタン・・・・コレかな)
ルシフェルは恐る恐る研究所の扉の右の方にある小さな赤いボタンを押してみる。
─────────カチッ。・・・・・・ウィィィィィン。
(な、なに?)
その直後、機械的な音と共に突然扉の上方からモニターのようなモノが降りてきた。
そして、それには白衣を着た硬い表情をした青年が映っている。
「いらっしゃいませ。私、所長補佐の・・・」
「いらはい、いらはい。めっぎゅちゃっんです♪(振り付きで)こっちはフィアル・C・ディ
ブロン。めぎゅ達は所長さんのひしょひしょなんだ・・な(ゴリエ風)」
その青年・・・フィアルというらしいが・・・彼の台詞途中で突如ネコ・・・の
様な生物がフヨフヨと乱入してきた。
(・・・・・・・・・・・・・これはナニモノっっっっ!!!!!!???????)
ルシフェル達は一斉にそんな感想を抱き、思わずズサッと後ずさりする。
「・・申し訳ありませんが、アポイントメントの・・・」
「所長の野郎はアポなしの無い奴は会わないって言ってるんだじぇ。ね?」
「・・・・・・・・(コクリ)」
呆気にとられているルシフェル達が言葉を発する前に、フィアルという青年は
ルシフェル達を追い返すような台詞を口に・・・するのを再び遮られ、ネコのような
・・・めぎゅという生物がかわりにその続きを言った。
「アポイントメント・・・ですか・・」
ルシフェルが困った様に考え込んでいるとブラム、リギィ、ユディトが
口々に苦情を言い始める。
「わざわざ来てやったってのに、そんなのありかぁ・・・?」
「そーだそーだっ!」
「くきゅっ!くきゅっ!!」
しかし、尚もフィアルとめぎゅによって帰るよう促された。
「申し訳ありま・・」
「すまんがダメじゃと言っちょるだろ。帰んなされ」
(・・・・困りましたね・・せっかくここまで来たのに・・・)
ルシフェルはやはり困ったような表情を浮かべながら、やむおえず
その場を立ち去ろうと試みるが・・・
「・・・・・は、承知いたしました。お待ちください」
モニターの向こうで何者かに何か言われたらしいフィアルがルシフェル達を引き止める。
「何でしょう?」
足を止め、ルシフェルが振り返ると、フィアルが再び口を開いた。
「所長が・・」
「所長はあんた等が頼みを聞いてくれたら会ってやってもいいって
言ってるんだじぇ!そうだよね?」
またもやフィアルの台詞はめぎゅによって遮られる。
「・・・・・・・・(コクリ)」
そして結局重要な内容は全てめぎゅが話してしまい、フィアルは
頷くだけになってしまうのだった・・。
「頼み・・・?」
不審そうにブラムが尋ねると、フィアルが今度は台詞を
遮られないようにめぎゅを押さえ込みながら答える。
「所長は今行なっている研究において、シュアラム草を必要としていらっしゃいます故、
それを採集し研究所にお持ちしていただければ・・・」
「所長は会うってさ☆」
せっかくフィアルの工夫にもかかわらず、めぎゅはフィアルの
腕から抜け出て、やはりその台詞を遮った。
(・・・この人たち(?)の掛け合いも楽しいな・・)
ルシフェルはのほほん≠ニそれを見守る。
「シュアラム草・・・って何だ?」
それまで我関せず、といった様子でユディトとじゃれ付いていた
リギィが突如耳に入ってきた聞きなれない言葉に好奇心を抱いたらしく、
ブラムの袖を引っ張って尋ねた。しかし当のブラムは面倒くさそうにリギィをあしらう。
「・・・はいはい、後でな。シュアラム草を持ってくりゃホントに会って貰えんだな?」
そしてフィアルにそれが真実であるのかを尋ねた。・・・今までの経験から
言ってこのような交換条件にのって正しかった、というものがあまり無いのだろう・・。
「所長は一度言ったことは必ず守る方です。その様なご心配をなさる必要はありません」
フィアルは眉一つ動かさず淡々と返答をした。
「分かりました。・・・明日、この時間までにはお持ちします」
その様子を見て少しの不安を残しつつも条件に承諾する。そして・・
「それでは・・・」
「また明日来るがえぇ☆」
最後の最後も台詞を遮られるフィアルだった。
(・・・シュアラム草・・・なんて・・なんに使うのか分からないけど・・ま、いっか・・)
ルシフェルは溜息をつきながら今日のところは宿に戻るように他のメンバーに提案した。
■嫌な予感…■
「なぁ、しゅ・・・・なんとか草って何なんだよぉ?」
宿屋について、すぐさまリギィが先ほど先送りにされていた質問を再び口にした。
「・・・お前結構しつけぇな・・。シュアラム草ってのは湿地帯とかに自生してる雑草み
てぇなもんだよ」
「・・・雑草?」
「・・・そんなの、なんに使うんでしょうねぇ」
ブラムの面倒くさそうな答えにリギィが怪訝な表情を見せ、
ルシフェルも不思議そうに首をかしげながらそれに続く。
(・・・・リギィは当たり前だけど・・ルシ君も知らないのか・・シュアラム草の効力・・)
ブラムはシュアラム草の最近解明したばかりとされる効力を知っているだけに、
そこはかとない嫌な予感を感じているのだった。
(・・・シュアラム草は・・・媚薬とか、惚れ薬とかの材料なんだよなぁ・・・)
煙草を吹かしつつ、ブラムは溜息をついてルシフェルを見つめる。
(・・・そんなもんを研究材料にしてる野郎がまともな奴だとは思えねぇんだけど・・・。
ま、これ以上ルシ君に手ぇ出すような悪いムシは出てこないだろ。うん、これ以上男色家
が出てくるなんざ・・・作者の腕が無い証拠だよな・・・まさかそんな事・・・)
ブラムは自分の中でそんな思いを駆け巡らせながら苦笑いすら浮かべていた。・・・・・。
「シュアラム草なら、ヒュヴァルスター湿原に自生してるはずですよね?」
「あ・・?あ、あぁ、そうだね」
突然ルシフェルに話を振られ、ブラムは聊か慌てて返事をする。
「あそこなら近いし、明け方くらいに出発すれば時間通りに研究所に持っていけますね」
「あぁ、そうだね」
研究所に行く、という言葉を聞いてブラムは不安さが増幅される思いがした。
(・・・気のせいだとは思うんだけど・・マジで嫌な感じがする・・・)
「湿原かぁ・・・走り回れないからオレあんま好きくないぞ・・」
「そう・・・だな」
リギィの不満そう且つ無邪気な発言にも適当な返事しかしない。
「ブラムさん・・どうしたんです?なんだか・・さっきから生返事ばっかり・・・・」
ついにルシフェルにもそんな事を言われてしまう。
「・・・・・・・・ルシ君、所長って奴がどんな奴でも・・・」
一瞬、観念して自分の抱いている嫌な予感について言おうともするが・・・やはり、
憶測だけで・・しかもこんなクダラナイともいえる事で騒ぐのも情けない・・。
「いや、やっぱいいや」
「・・・・・?」
言葉を濁され不服そうなルシフェルをよそに、ブラムはバツの悪そうに
煙草を灰皿に押し付けるのだった。
(・・・まさか・・・まさか、な・・・)
そう何度も自分に言い聞かせながら・・・。
(気のせい・・。きっと気のせい・・)
■探索・シュアラム草!!■
「うわっ!!この辺滑るぞっ!」
「気をつけてくださいよ〜、まかり間違ってシュアラム草を踏み潰したり
したら大変ですから」
ヒュバルスター湿原に着いたブラム達は早速シュアラム草を探していた。
ぬかるんだ地面を元気いっぱいに駆け回ろうとしてもう何度も転んで
しまっているリギィは両手をブンブンと振り回しながら必死にバランスを
保とうとしている。ルシフェルはと言えば慎重な足取りでシュアラム草を探しつつ、
いまいち危なっかしいリギィの様子を気にしていたり・・・。
(あ〜あ〜・・・ま〜た、すっころんだよリギィは・・)
ブラムもルシフェルと同じくワタワタとしているリギィを見ながら呆れたように溜息をつく。
(・・・妙だよな・・・。シュアラム草なんて雑草がここまで探しても見つからねぇなんて)
・・・そうなのだ。ブラム達は何だかんだ言いながらも朝一でこの場所に来た訳で・・・
かれこれ四時間は探し続けていると言うのに・・・先ほどからまったく見つかる気配が無い。
雑草、と銘打たれているだけあって普通シュアラム草は湿地帯などに
所かまわず自生しているはずなのだが・・・。
「きゅう〜(>_<)」
「どした?もぉ疲れたのかな?」
珍しくルシフェルでなくブラムの肩に乗っかってきたユディトが鳴き出したため
ブラムはご機嫌取りをするように撫でながら優しく聞いてみる。
「きゅい(>_<)/」
「そっか・・でも、無理しちゃダメだから俺の肩に乗っかって休んでな」
「きゅ〜ヽ(^o^)丿」
ユディトのお返事を聞いてブラムが優しくそんな提案すると
ユディトは嬉しそうにブラムの頬に擦り寄ってきた。
(・・・・あれ・・・なんで俺、ユディト君の言葉が分
るようになってんだろう・・・?)
のどかな雰囲気を満喫しつつ、ブラムはふと我に返って慣れ≠ニいうものの
恐ろしさを実感する・・。
「ブラムさん、見つかりましたか?」
そうこうしながらユディトと戯れていたブラムの元にルシフェルが溜息を
つきながら歩み寄ってきた。リギィはまだ遠くの方で遊んで(暴れて)いるらしく姿が見えない。
「全っ然・・。そっちは?」
「こっちも全然・・・。所詮雑草だ・・なんて見縊り過ぎてましたかね・・」
「そうだね・・」
(っていうか、最近発覚したあの効力の所為で一気に刈り取られちまった
のかもしれねぇんだよな・・)
「思いのほかこのヒュバルスター湿原も広いですしね・・・」
「きゅっ(*^_^*)」
ブラムが探す事に飽き飽きしたというような態度で唯一乾いている
地面に腰掛けると、ルシフェルも疲れてしまったという風にブラムの
肩の上のユディトをなでなでする。
「確かにね・・・。地図で見た割合と比べると・・・もしかしてこの湿原、徐々に広がっ
ていってるとか?」
ブラムとしては冗談交じりで言ったつもりなのだが、あながち間違いでも
なかったらしくルシフェルは荷物の中から取り出した地図を広げて再度溜息をついた。
「ありえる事かもしれませんね。この地図は二年前のものですから、コレと少しくらい変
わっていても不思議はありません」
(マジっスか・・・)
「・・・ってことは、近いうちに新しい地図を買わないといけないね」
ルシフェルの困ったように発した言葉にブラムは思わず引きつった
笑みを浮かべつつそんな提案をする。
「・・・新しい地図を入手するとなると・・一刻も早く第三地区に行く必要がありますよ
ね・・」
自分の傍らに座っているブラムの少しばかり乱れた髪に触れながら
ルシフェルがそんな事を呟くと、それを聞いたブラムは口元に手を当て、
何か思い出したように言葉を発した。
「・・・地図っていえば俺、知り合いに作ってる奴がいたな」
「へぇ・・・そうなんですか・・・」
「くぅ〜(~_~)」
「そいつに会えればいいんだけど・・そいつ・・」
────────ガササササッ。
ブラムの台詞を遮るようにして茂みからものすごい物音が聞こえる。
「なに・・?」
────────ガサササササササササッ。
ルシフェルとブラムが警戒を強め、神経を研ぎ澄ませてそれの聞こえてくる
方向に注目すると、物音は収まるどころかよりいっそう激しくなっていった。
「・・・ここまで怪しいと流石にほっとけないね・・・。行ってみよう」
ブラムは面倒くさそうに立ち上がり、ルシフェルの腕を軽く引きながら物音
のする方向へと歩き始める。
「っなにすんだよ!!」
「・・・リギィ?」
ヌメヌメとする足元に気をつけながらも茂みを割って深い所まで行き着くと、
そこには一人の男となにやら争っている様子のリギィの姿・・・。
「いったいどうし・・・」
ブラムがリギィに尋ねようとするも、リギィは必死で男に食い下がっていて
ルシフェルやブラム、そしてユディトの存在に気づきもしない。
「それオレんだぞ!返せよぉ!!」
(・・・・何か取り合ってんのか?・・あ、あれって・・)
リギィが怒鳴りながら一生懸命に男と引っ張り合っているのは・・なんとシュアラム草・・・。
「う〜・・・オレが先に見つけたんだぞ〜っ!!」
(・・・ってか、リギィと張り合ってるあの男・・どっかで見た事あるような・・・)
ルシフェル共々呆然とその場に立ち通していたブラムは、リギィとシュアラム草を
取り合っている男に目をやり自分の記憶を呼び戻そうとした。
「・・・・ランクEの賞金首、ムスク・カートゥン!!」
(そう、それだ!!)
思い出したようにルシフェルが叫んだ名前にブラムはポンッと手を叩き、
半ばすっきりした様な面持ちで頷く。
「しょ、賞金稼ぎかっ!?」
ブラム、ルシフェルの存在にようやく気がついたその男:ムスク・カートゥンは
脅えた様な態度でリギィから力任せにシュアラム草をぶん取るとすぐさま逃げ出した。
「あっ!!てめぇ、返せよっっ!!!」
「リギィ、落ち着いてください」
無論それを追おうとしたリギィだったがルシフェルに止められ、
しぶしぶといった様子でこちらに戻ってくる。
(・・・ムスク・カートゥン・・こんなトコに身を隠してるのか・・?)
ブラムは口元を手で覆うような仕草をしながら意外な遭遇について考えるのだった。