■取って置きの情報■

「なぁ・・コイツほんとに当てになんのか?オレ・・・なんか嫌だぞ」

「なんやこの坊ちゃん、エライ失礼やなぁ」

ソフィアを散々嗜めた後、十分の一の値段でいいという条件を

取り付けさせて共に宿屋に戻ったブラムとルシフェルを、リギィは怪訝な

顔で迎えてくれた。

「当てになるかは分かりませんけど、とりあえずプロの情報屋さんですから。

信じてみる価値はあると思いますよ」

「お〜♪やっぱカワイ子ちゃんは分かってくれてるやん♪料金タダで

えぇからやっぱり俺にご奉仕してぇや」

ルシフェルの言葉にソフィアは大喜びで抱きつこうとするが・・・

「殺すぞ?」

「すんまへん・・・」

またもやブラムがそれを力ずくで止める。

(・・・・悪いムシと関わっちまったなぁ・・)

ブラムはそう思いつつ、ルシフェルを守るようにその隣に腰掛けるのだった。

「んで?とっとと掴んでるネタってのを吐いて貰おうかなぁ、情報屋サン」

ブラムは懐から煙草を取り出し、不機嫌そうにそれに火を点けながら言う。すると、

「ブラムさん、なんだか警察かヤクザみたいなんですけど・・・」

苦笑いを浮かべたルシフェルにそんな事を言われてしまった。

「ひっでぇの。ま、気に喰わない相手に対する俺の態度の冷たさはヤクザの

比じゃないってのは認めてるけどね」

ブラムはルシフェルに冗談ぽく言いながらも、こっそりとルシフェルにチョッカイを掛け

様としていたソフィアを冷たい眼差しで一瞥する。

(・・ったく、油断もスキもねぇ。俺のルシフェル君に・・・)

ルシフェルの肩を抱き寄せたまま、尚もソフィアを鋭く睨み続けると少しばかり青ざめた

様子のソフィアがようやく口を開いた。

「もぉ降参しますて。お2人がいかに愛し合ってるかは痛いほどに(まさに文字通り)

分かりましたさかい、金輪際このカワイ子ちゃんには手ぇ出さへんと誓わしてもらいます」

手で十字架を描きながらブラムにそんな風な事を言う。しかし、その傍らで不思議そうな

表情を浮かべているルシフェルの手を握ったりしているため説得力には欠けるのだが・・・。

「それで・・情報というのは?」

「あぁ、せやせや。教祖についての取って置き情報やで〜♪」

少々うんざりした様子のルシフェルが話を始めるように促がすと、ソフィアはようやく仕

切りなおして真面目(?)な表情になった。

「まず、この街に大流行中の宗教についてやけど・・・教祖の持ってるネヴィームっちゅう

預言書を信仰してんねん。まぁ正確に言えばネヴィームに書かれている言葉を

授けてくださってる神様を信仰してるんやろうけど、これがまたよう分からへん」

ソフィアは子供のような無邪気な眼差しでブラム達に話し続ける。彼の話では、ネヴィー

ムそのものは教祖しか見た事がなく、教祖に神託を預けているはずの神の名も決して明か

される事はないのだという。

「さらに、これだけとちゃうねん。その教祖っちゅーのが、かなりの喰わせもんでな。

この布もせやけど、何かにつけて清めの品や言うて高う売りつけてるらしいわ。

他にも寄付金とか言いながらかなりの額集めてる。そんで・・」

「寄付金があまり支払えない人には何かしらの禍≠ェあると言ってくるんですね?」

ソフィアの言葉を最後まで聞くことなくルシフェルが口を開いた。それを聞いてソフィア

は少しばかり眼を見開いた後で唇の端を吊り上げて返答をする。

「・・・なんや、よぉ知ってるやんか。御察しの通り、教祖は個人データを集計して

寄付金の総計が少ない人間にネヴィームに書いてたで〜とかなんとかほざき腐って

色々阿呆な事ぬかしよるらしいねんなぁ、これが」

「んで、そのいい例がこの赤ん坊の母親だって訳か・・・」

ブラムは再び不機嫌そうに呟いた。それを聞いて、真っ先に反応を示したのは言うまでも

なく・・・

「な、なんだよそれ!?ヒドイじゃんか!!」

リギィ。

(・・・だから、話の流れで解釈しろよ・・・)

ブラムは呆れたような表情をしながらリギィを見つめるが、リギィはそれ所ではないとで

も言うようにソフィアに食って掛かっている。

「そんな事でアイツ捨てられたって言うのか!?そんなのオカシイぞ!!

嘘ついてんじゃないだろうなぁ、お前ぇ!!」

「な、なんやこの坊ちゃんエライ乱暴やなぁ。・・く、首、首締まってるて・・・・ぐふっ」

(いいぞぉ〜リギィ、殺っちまえ〜♪)

「お〜い、リギィ。その辺にしとかねぇとマジでそいつ逝っちまうぞ〜」

ブラムは密かにそんな事を考えながらも口先だけではリギィを止めるのだった。・・・それ

でも止める気がさらさら無いのはキッチリ表れてしまっているが・・・。

「リギィ、止めはしませんけどもう少し静かにしないと赤ちゃんが起きちゃうでしょ?」

「あ、そっか」

(ルシ君止めはしないんだ・・・。もしかしてソフィアの事キライ・・・なんだろうな)

ルシフェルの態度を見てそう確信するブラムだった。

「・・・それより、アンタ教団の一員なんじゃないのか?そんなカッコしてるし」

(すっかり見過ごしてたけどそうだよな・・・。こないだお祈りとかしてたしな)

ブラムが思い出したようにようやくリギィに開放されたソフィアに尋ねるとソフィアはニ

ンマリと笑顔を浮かべて得意そうに答える。

「んふふふふ。よくぞ聞いてくれましたっちゅーところやな。この優秀な

情報屋・ソフィア様は教祖の不審な点にすぐさま気付き、自ら信仰するフリを

する事によって確かな情報を集めてたんや♪」

(・・なんだ、結構まともに情報屋してんだな・・・コイツ)

ソフィアの言葉に対し、ブラムは少しだけの感心をみせた・・・のだが・・・

「どや〜カワイ子ちゃん、俺の事見直したんちゃう?なぁなぁ、

ご奉仕してくれる気にならへん?なんなら俺がリードしたっても・・・・はごふっ!!」

「まだ懲りてねぇのか、てめぇは」

ソフィアが懲りずにルシフェルの太股を撫でたためまたもや蹴りでそれをとめ、そして今

度こそは殺しておくべきだろうかと本気で考えるブラムだった。

■思い当たる人物■

「ブラムさん・・・あの・・何をしてらっしゃるんですか?」

「消毒(即答)」

(消毒・・・?)

ブラムの訳の分からない返事を聞いて、ルシフェルは余計に困惑した面持ちになる。

というのも、ブラムがソフィアをボコボコにして追い出した後リギィは赤ちゃん共々ルシフェ

ルとブラムの部屋に泊まっていくというので先に風呂に入るよう促がした・・その後、ソ

ファに座ってのんびりとコーヒーを飲んでいたルシフェルにブラムが抱きついてきたのだ。

ルシフェルも最初はブラムはいつものようにじゃれ付いて来ているだけかと思ったのだが、

必要以上に擦り寄ってくる上に抱きしめている時間がやたらと長い。そのため不思議に思

ったルシフェルが尋ねてみたのだが・・・・その答えが消毒=B

「ブラムさん、あの・・くすぐったいですから。もう離れ・・」

「やだ」

(・・・もぉ・・・。ちゃんと真面目に話したい事があるのに・・・)

あくまで頑ななブラムの態度に呆れつつ、ルシフェルは溜め息をついた。

「ルシ君さ、情報屋の話聞いて・・教祖の事・・・なーんか引っかからなかった?」

(・・・この体勢のまま話すんだ・・・?)

ルシフェルの首筋に顔を埋めたまま、ブラムは真剣な声で真面目な内容の話を切り出す。

ルシフェルはといえばブラムの持ちかけた話題と同じ事を話したいと思っていただけに、

思わず複雑な表情になるのだった。

「例えば、教祖の詐欺めいた手口とか・・・ですか?」

「まぁね。おばさんの情報が間違いじゃないとしたら、繋がりが無いとは思い難い・・ってかんじ?」

「えぇ。もう少し調べてみない事には分かりませんけど、この教団には確実と

言っていいほどの確率でキヌザズト・リヌスが関係しているでしょうね」

ルシフェルが確信付いた笑みでブラムに言うと、ブラムは抱きしめている手を少しばかり

緩め、その右手でルシフェルの頬に触れる。

(・・・・・?)

ルシフェルはブラムの仕草を不思議に思いながらも警戒などする事もなく、彼の次の言葉

を待つ。

「調べる・・・っていうよりさ、もういっその事乗り込んじゃわない?どの道、教祖の

詐欺行為は確信付いたものなんだし。それで俺たちの狙ってるキヌザズト・リヌスの

手掛りが掴めれば最高・・みたいな?」

そしてブラムの口から発せられた台詞はこんな物だった。

「・・・・そうですね。一人のターゲットにあまり時間をかけるのもなんですし・・。それに・・」

「教祖って奴に痛い目見てもらわないと気がすまない・・・?」

「・・・貴方だってそうでしょ?」

ほんの数pしかない距離の中、妙な意見の一致に二人は顔を見合わせて笑い合った。

「お、お前ら何やってんだよ!?」

「くきゅ\(◎o◎)/!」

実は真面目な話をしているルシフェルとブラムなのだが・・・一見いちゃついている様に

しか見えないため、風呂から出てきたリギィとユディトに驚愕の表情を浮かべられてしま

う。リギィは顔を真っ赤にして、何とか赤ん坊はキチンと抱いているものの自分の見てい

る状景が信じられないという風に口をパクパクさせ、そしてユディトはブラムとルシフェ

ルの間を目掛けて飛び込んできた。そして、

「痛って!!」

ルシフェルの頬に触れていたブラムの指に思い切り齧り付く・・・。

「ブラムさんっ!?ユディト、ダメでしょ噛んだりしたら・・・めっ。ブラムさん大丈夫ですか?」

そんな事をしたところでルシフェルに怒られて余計に落ち込むことになるだけだというの

に・・・ユディトは泣きそうな顔でルシフェルの膝の上に乗っかるのだった。

(・・・ユディトったら、ブラムさんの事あんなに大好きだったのに・・・)

ルシフェルはユディトがブラムのルシフェルに対するセクハラが気に喰わないのだと、や

はり気付かないのだった。

「・・・・お前らって・・もしかして・・・う、嘘だぁ〜(叫)」

そしてここに苦悩している少年が一人・・・。

■敬意を表して■

「なぁ、一気に乗り込むってどうやってだよ?」

先程話していた内容をリギィに伝えると、彼は怪訝な表情でそんな事を聞いてきた。

確かに無謀とも思える2人のこの考えに、早々簡単に納得など出来ないだろう。

「よく聞いて下さい、リギィ。・・・何も最初から力ずくに乗り込んでいく、という訳ではないんです」

「そ〜そ。適当な事言って教祖のいる所まで案内していただいた後に、

旨く暴れるって感じな訳よ」

ルシフェルの返事に同意するような形でブラムも続ける。

(・・なんか、いいねぇ。ちゃんと言葉にして打ち合わせとかしてなくても、頭ん中で既に

おんなじ様な計画が立ってるってのは)

ブラムは隣にいるルシフェルを一瞥した後そんな事を考えながら思わず顔を綻ばせていた。

パートナーとしてルシフェルが優秀であるという事への満足感と好きな子と自分の考えて

いる事が同じであるというこの状況への喜びで充足されているためとでも言うべきか・・・。

「適当な事言って・・って、具体的にどう言うんだよ?」

リギィは尚も不満(不安)そうにブラムに尋ねる。

(・・・ガキのクセに心配性な奴。・・・ま、それだけ赤ん坊の事に必死になってるって感じ

なのかね)

ブラムはそんなリギィの様子を見つつも余裕の態度で答えた。

「安心しろって。俺とルシ君が正装≠オて新しい宗教の研修をしたい、

だの何だの言やぁ大丈夫だからよ」

「・・・・正装・・?」

ブラムの言葉にリギィは尚いっそう怪訝な表情を見せ、ルシフェルも不思議そうに首を

しげている。

「こないだルシ君の入浴中に脱衣所入った時、君のロザリオ見ちゃったんだよねぇ♪

あ、別に風呂を覗いてたわけじゃないから安心してね」

「・・・・・え?」

ブラムがルシフェルにそんな事を耳打ちすると、ルシフェルはブラムの言わんとする事が

分かったらしく少しばかり青ざめた。

「見ちゃったんだよねぇ。ロザリオにはめ込まれてる石の色・・・グリーンだったんだ?」

グリーンの石が示すのは大司教の位。大司教というのは教区・・つまり宗教上ではこのリ

ングファット領地の長とされる程に高く位置づけされており、教会を任される立場の司祭

であるブラムよりも二つ上の階級なのだ。

「・・・大司教として・・行けって言うんですか?」

「ちょうど司祭の俺なら大司教サマの付き人クラスとして、ちょうどいいんでない?」

ブラムは悪戯っぽい笑みで項垂れ気味のルシフェルにウインクなんぞしてみる。

「・・・・・・・嫌・・・です」

「くきゅ〜<(`^´)>」

ルシフェルは泣きそうな面持ちでブラムにそんな訴えをしてきた。ユディトもそれ見た

事か≠ネどと言いたげな顔をしている。

「それが一番手っ取り早くていい方法だよ?」

(・・・・こんなに嫌がるってことは・・・やっぱ・・)

ブラムがこの提案をした理由は、勿論手っ取り早いから真実味があるから等の事柄も本当

だが、もう一つ・・・ルシフェルのロザリオを見てしまったときに抱いた自らの疑問を確

かめるためでもあったのだった。

「・・・・でも・・・・・」

「それで旨くいくのか?」

(お、リギィの奴中々のナイスタイミング)

ルシフェルが再度異議を申し立てようとした瞬間にリギィが不安げに口を開く。ブラムは

その様子を見て一人ほくそえんでいた。こんなリギィの様子を見て、ルシフェルが断るは

ずが無いと確信しているのだ。

「・・・分かりました。・・・・その方法でいきましょう」

「安心していいよ。俺がちゃーんとカッコよくエスコートして上げるから。

大司教ユアン様に敬意を表して・・・ね?」

ルシフェルの表情が少し曇ってしまった事に若干の罪悪感を感じつつもブラムはルシフェ

ルの手の甲に口付けをしたりと、いつもの様に冗談めいた振る舞いをする。

(・・・俺、いつの間に・・こうやって無理矢理にでも・・・ルシ君の真実が知りたいと思

い始めたんだろう・・・)

ブラムはお互いがお互いの真実を何も伝え合わないという今の状況が歯痒くなり始めたの

だ。ルシフェルの事を何も知らない、自分の事を彼に何も話していない・・・そんな今の

状況を・・・。

「なぁ、オレもう眠い・・」

「くきゅい(-_-)zzz」

(このガキ共・・・)

お子様2人に急かされてブラムは自分のベッドを大人しく明け渡し、結局自分はソファで

眠る破目になるのだった。

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