A C T2 やがて来る日の昔語りA旅の目的
■意外な所持品■
「今回の賞金・・・殺し屋とっ捕まえて500万フェンってのは安かったよね・・」
「そうですね・・。でも、殺し屋なんていってもランクCですから。相場と言えば相場ですよね」
ここはサラサンスリードの街にある宿屋。そして、この2人はもはや御馴染み(?)賞金稼ぎ
のルシフェルとブラムシヴァーズ。相部屋を取った二人は今日の稼ぎについて話していた。
ルシフェルはベッドに腰掛けているものの・・・何やらブラムの姿が見えない様子・・。
「ブラムさん、タオルここに置いときますよ」
「ありがと」
ブラムは一仕事終えた後のシャワータイム中なのだ。
(お風呂入る時に自分で用意してくれてると助かるんですけどね・・・)
タオルを置きに脱衣所まで行ったルシフェルは、さらに中から聞こえてきたブラムのそう
いえばパジャマも出してなかった、などという声に呆れる。このブラムシヴァーズと言う
男は、今まで一人でまたは女と一緒にしか夜を過ごした事がないなどと豪語していただけ
の事はあって、こういうパートナーへの気遣いに中々気が付いてはくれない。かと言って
ルシフェルの方も世話をやくことがまったく嫌いであるという訳でもなく・・・なんだか
んだ言いながらこの2人のコンビは割と合っているのかもしれない。
「あ、ブラムさ〜ん。ユディトはシャンプーじゃなくてボディソープで洗ってあげて下さ
いね〜」
そうそう、忘れてはならない存在(?)がユディト。いつものほほん≠ネルシフェルのペットで
ある。ルシフェルに懐いているのは言うまでもないが、ブラムの事もかなりのお気に入り
の様子で今も一緒にお風呂に入っていたり・・・。
(・・・えーっと・・ブラムさんのパジャマ、パジャマ・・・)
ブラムに取ってきてくれと言われたので、ルシフェルは勝手に開けていいのだろうか、な
どと戸惑いつつもベッドに腰掛けてブラムの荷物の中を探す。
(あ、あった)
と、ルシフェルが顔を上げた瞬間だった。
「くっきゅ〜\(゜ロ\)(/ロ゜)/」
突如パニくった様子のユディトがバスルームから飛び出してきたのだ。
「あ・・・ちょ・・ユディト、ダメですよ。泡がまだ落ちてな・・」
──────ドサドサッ。
ルシフェルがあまりに飛びまくるユディトを止めようと立ち上がろうとしたため、ルシフ
ェルが膝の上に乗せていたブラムの荷物が床に落ちる。
「あ〜・・・落としちゃったじゃないですかぁ・・・。もぅ、めっ」
ルシフェルはユディトをようやく捕まえると、その額を人差し指でつんっと叩いてお説教。
「きゅい〜(;_;)」
ルシフェルに怒られたユディトはしゅんとしてルシフェルにされるがままにタオルに包ま
った。そのユディトをベッドに置いて、ルシフェルは慌てて落としてしまったブラムの荷
物を拾い上げる。
───────カチャン。
(・・・ん?)
荷物を一つずつ拾っていると、一着の服から何か金属製の物が落ちる音が聞こえた。
それに気付いたルシフェルはすぐにそれを拾おうとするが・・・
(・・・これは・・ロザリオ?)
それは銀色をしたシンプルな形のロザリオで、中心には小さな水色の石が
はめ込まれている。そして、裏側には・・・
(・・・・ここに神への永遠の忠誠を誓う。B.R.・・・これって・・・)
「ゴメン、ルシ君。ユディト君にはお湯が熱すぎたらしくてさ・・」
ルシフェルがしゃがみ込んだままロザリオを見ていると背後から突然ブラムが声を掛けてきた。
「あ、すみませんブラムさん。荷物落としちゃ・・・・・・・・・・・・服、着て下さい」
ルシフェルが振り返って咄嗟に謝ると、そこにはタオル一枚でバスルームから
出てきたブラムの姿・・・。ルシフェルは慌ててベッドの上に置いてあったブラムの
パジャマを手に取り、ブラムにそれを押し付ける。
「別に気にすることないのに、男同士だし?」
「そんな格好してると風邪引きますってば・・・」
あっけらかんとしているブラムに、ルシフェルは呆れたようにそんな事を言うが・・・。
「まぁまぁ。そう思うんならルシ君暖めてよ♪」
ブラムはパジャマを羽織るだけの格好のままルシフェルに抱きついてくる。
「ちょっ・・・・ブラムさん・・・もぉ・・離して下さいってば・・」
──────カシャッ。
ブラムがあまりにも擦り寄ってくるために流石に抵抗をし始めたルシフェルは
思わず先程拾い上げたロザリオを落としてしまう。
「・・・・これ・・」
(・・・・・え・・?)
それを見た瞬間、ほんの一瞬だけではあるがブラムの表情が強張った。
「ご、ごめんなさい。あの・・荷物を落とした時に・・」
ルシフェルは咄嗟に謝るが、ブラムは特に何も返事をすることなくそれを拾い上げる。
「これ・・・なんだか知ってる・・・よね?」
ブラムが少しばかりバツの悪そうな表情でルシフェルを見つめ、そんな事を
尋ねるとルシフェルはしばらく考えた後で控えめに答えた。
「・・・僕も持っていますから。でも、ブラムさんは血塗られた民なのに・・・?」
裏側に神への忠誠の言葉が彫られたロザリオ・・・これは神に仕える道を選んだ者に与えられる、修道士の証・・・。
「う〜ん・・・まぁ、お兄さんには色々あんのよ。こう見えても教会一個任される立場だったんだよ?」
ブラムは冗談交じりで言っているが、ロザリオを見てルシフェルはそれが本当の事なのだ
と理解する。
(・・・水色の石は司祭クラスですもんね・・・)
ルシフェルは一部には納得したが一部にはまだ納得できていなかった。
(血塗られた民が祭司・・?)
血塗られた民は吸血鬼の子孫とされている。・・・ここまで言えばもう、ルシフェルが困惑
している理由がお分かりいただけるだろう。吸血鬼の子孫ならば、当然血塗られた民にも
神を信仰するなどという文化がない。それが神への信仰心を認められ、教会を任されるほ
どの立場にまで上り詰めるなどと言う事はありえないと思っていたのだ。
「ルシ君もお風呂入っておいでよ」
「あ、はい。そうですね」
ブラムに急かされ、ルシフェルはタオルにくるんだユディトと自分のパジャマ等を持って
バスルームへ行く。
(・・・色々ある・・・か)
ブラムの軽く放ったであろう台詞を少しだけ気にしつつ・・・。
■次のターゲットは?■
所変わってルシフェルとブラムはサラサンスリードの街を出てファレスティアの街に向っ
ていた。車は持ち主に返してしまったので徒歩で・・・。
「ブラムさん、このキヌザズト・リヌスって・・本当にファレステリアの街にいるんでし
ょうか・・?」
ルシフェルは不安げにブラムに尋ねかける。・・というのも、このキヌザズト・リヌスと
言うのは350万フェンの賞金首であり、その犯した罪はと言うと度重なる詐欺。
詐欺罪は足が付きにくいという事もあって、賞金の割にはランクBに位置づけされている。
「おばさんの情報だからな。・・・俺への嫌がらせじゃない限りは本当だと思うよ?」
ブラムもルシフェルの様子を見て、なんとなく不安そうではあるもののそんな風に答えた。
ブラムの台詞通り、賞金首キヌザズト・リヌスがファレステリアの街にいるらしいと
言う情報をくれたのは例の賞金稼ぎ登録をした喫茶店の店主なのだ。
(・・・ブラムさんへの嫌がらせじゃない限り・・・・)
その一言で不安がよりいっそう大きくなったルシフェルだった。
「そんな事より、ルシ君さぁ♪」
「な、なんでしょう?」
ブラムに急に肩を引き寄せられ、ルシフェルは驚きつつも懐に入れている
眠ったままのユディトを落とさないように気を配る。
「最近・・・外套着ないよね。・・・なんで?前に俺が言ったから・・とか?」
ブラムはワクワクしたような眼差しでルシフェルを見つめて、ルシフェルの肩に
回しているほうの手で銀色の髪に触れた。
(・・・・・?)
「そうじゃないですよ。・・・でも、ブラムさんとパートナーになったから
着ないようにしたんですけどね」
ルシフェルはブラムのさり気無い(?)仕草・・・というより触り方を不思議に思いながら首
をかしげるも、キチンとブラムの質問に答える。
「・・・・俺とパートナーになったから?」
それを聞いたブラムは尚いっそう目を輝かせて再度尋ねた。
「はい。僕一人だったら、こんな髪と目を曝して歩くのは少し辛いから・・・。
でも、今はブラムさんと一緒で・・・安心してるんです。だから、今までみたいな・・・
云わば武装は必要ないと思って」
臆面無くルシフェルは言う。間近で屈託のないルシフェルの微笑みを見せられ、ブラムが
悩殺されているのは言うまでもない事であり・・・。
「・・・ルシ君・・・可愛過ぎ・・・」
「ひゃっ!?・・・ちょっ・・・ブラムさん、離して下さい」
ブラムに思い切り抱きしめられ、耳にキスをされ、ルシフェルはわたわた≠オながらささや
かな抵抗をする。今の台詞は・・・おそらくルシフェルには深い意味はなかったのだろう。
それでも、ただでさえルシフェルにハマリ始めのブラムにとっては凄まじいほどの威力を
発揮している。・・・・おそるべし天然誘惑上手・・・。
「く?・・・・きゅっ\(◎o◎)/!」
ルシフェルの懐の中で目を覚ましたユディトはピッタリとくっついているルシフェル(飼い
主)とブラム(副・飼い主)の姿を見て固まってしまった。
「お、ユディト君起きたみたいだね」
ブラムはそんなユディトの様子など気にとめる事なく、そんな事を言いながらルシフェル
抱きしめたままでユディトを撫でる。
「すみませんユディト、起こしてしまいましたか?」
ルシフェルもそれは同じらしく、なにも気にとめずにユディトをなでなで。
「きゅ〜・・・・(―_―)!!」
ユディトは複雑な表情をしながらも、とりあえず返事をするのだった。
「・・・ブラムさんは?その・・・左目」
抱きしめられていたブラムの手が離れようとした時、ルシフェルは控えめにそう尋ねる。
「片眼鏡も壊れちゃったし・・・この辺じゃ中々造られてないからねぇ。
しばらくは・・このまんま、かな」
「そっか」
ブラムの心なしか不安そうな返答に、ルシフェルは優しい笑みを向けた。