■盗賊団襲来■

(・・・まぶし・・い・・・)

ここはサンディアキュールの街唯一の宿屋の一室。

「ブ・ラ・ム・さん、朝ですよ〜」

「・・・ん・・う〜・・・眩し・・・・・」

ルシフェルに布団を剥され、日光のあまりの眩しさにブラムは目を瞑る。元々夜方人間のブラムはルシフェルとパートナーを組んでたった

二日目にして、彼の規則正しい生活にだけは慣れる事が出来ないだろうと確信していた。

「もぅ、今日のアサイチで刀を取りに行くって言ってたでしょ」

尚も布団にすがり付いているブラムをルシフェルは拗ねたような面持ちで何度も揺さぶる。

(・・・必死で起こしてるよ・・・か〜わい〜・・・)

寝ぼけ眼でそんな事を考えながら、ようやくブラムはその体を起こした。

「くぅ〜(-_-)zzz」

いつも元気なユディトも朝だけは別のようで、いつものようにルシフェルについてまわる事をせずにベッドの上で眠い目を

擦っている。そうしているうちに大きな欠伸を何度もしながら身支度をしているブラムのもとへ、フロントに会計を済ませに

行っていたルシフェルがオロオロしながら駆け寄ってきた。「ブラムさん、今宿のおばさんに聞いたんですけど・・・。

昨夜、例の盗賊団がこの街に出たらしいんです」

「・・・例の・・・ってダルテ・アリュールが頭やってる?」

ブラムが段々とはっきりしてきた頭でひねり出した答えに、ルシフェルは頷く。

「マジで・・?昨夜?・・なんで俺ら気ぃつかなかったんだよ・・・」

それを見てガックリと肩を落としたブラムだったが、次のルシフェルの言葉によってその態度は一変した。脱力感のかわりに嫌な予感が

全身を駆け巡る。

「盗賊が襲ったのはこの街の・・・全ての鍛冶屋だそうです」

                  

慌てて宿を後にしたブラムとルシフェルはすぐさま昨日の鍛冶屋に駆けつけた。そこは壊されたドアに叩きつけられた

ような後の残る壁、昨日来たときは売り物として置かれていた幾つかの剣もなくなっていて・・・盗賊たちに荒らされた様子が

そのままの状態にされていた。

「おっさん、大丈夫なのか?」

心配した面持ちのブラムの問いかけに、刀鍛冶は重度の怪我はないと答えた・・・・が、それでも痛々しい傷跡が多数残っているのが見えて・・・。

「ごめんな・・・。アンタの刀・・あんな逸品なかなかねぇってのに・・盗られちまった・・」

刀鍛冶はブラムにそう謝り、何度も何度も頭を下げる。

(・・・やっぱな・・連中がアレを見過ごすわきゃねぇか・・)

「気にすんなって。盗賊にとられたってぐらい、すぐ取り戻して来るからよ」

ブラムは笑顔で刀鍛冶にそう言った。そう、ブラムがこのまま引き下がるつもりでいるはずがない。すぐに取り戻す気でいるのだ。

都合の良いことに盗賊の頭は試験の賞金首、ブラムが盗賊団の一つや二つ潰す事くらいなんの躊躇いもないのだから・・・。

(・・そうと決まったら早速シルザシューダの森に・・)

「ブラムさん、出発するのは少しだけ待っていただけますか?」

ブラムがルシフェルに出発の意志を伝えようとした時、それは彼の台詞によって止められた。

「いいけど、なにを・・・」

ブラムが承諾の意志を伝えようと振り返ると、そこには刀鍛冶の傍に甲斐甲斐しくしゃがみ込んでいるルシフェルの姿。

(・・・ルシフェル君・・何してるんだ・・?)

ルシフェルは刀鍛冶の怪我に手を翳して、なにか言葉を囁いている。

「ルシフェル君?・・・・・・・!?」

「聖なる真浄の癒し、母なる大地の祝福、天空の加護によりて吾汝に一時の奇跡を与えん」

ルシフェルが言葉を発するにつれて、刀鍛冶に翳されたその手が緩やかな輝きを増して行き、傷付いている部分を覆うように段々と

柔らかな光が放たれて・・・

(・・・回復魔法・・・陽の魔法が使えるのか?)

この地に存在する魔力は2パターンある。1つは光・水・風などの加護を受けた回復魔法などに代表される陽の魔法、そしてもう1つが

闇・大地・炎などの加護を受けた主に攻撃魔法が多い陰の魔法。いずれも備わっている魔力の属性に応じて使う事が出来る。

しかし、回復魔法だけは別だった。回復魔法だけは教会に勤めている、それもある一定の位まで上り詰めた修道士のみしか使う事が出来ない。

「はい、もう大丈夫ですよ」

「くぅ(^_-)-☆」

ルシフェルがそう言って刀鍛冶に笑顔を向けた頃には刀鍛冶の負っていたすべての怪我が綺麗さっぱり消え去っていた。

「・・・不思議なもんだな」

刀鍛冶は感動したとでも言う風に怪我のあった場所に何度も触れてルシフェルに礼を言っている。

(・・・修道院のお偉いさんが賞金稼ぎ登録ねぇ・・・ま、なんか訳ありってヤツか・・)

流浪の民の生き残りであるという彼の境遇だけでも十分訳あり≠ニいえるのだろうが、ルシフェルにはまだ内に秘められた理由がある。

なにか・・・きっと・・・。けれど、ブラムはそれをルシフェルに聞き出そうとはしない。自分がすべてをさらけ出す事をして

いない以上、無理に相手の内だけを見せて欲しいなどと言う権利はないのだから・・・。

(ま、ボチボチって感じでね)

パートナーとしてのこれからはきっと長くなる・・・だったら少しずつお互いの手札を見せていくしかないだろう。

少なくともブラムの目的を果たすためにはルシフェルの理解も必要なのだ。

「ルシフェル君、一時間後に宿で落ち合おう。それまで各被害者に聞き込みってことで・・。ね?」

「あ、はい。分かりました」

「くっきゅ〜(^O^)/」

情報集め・・・賞金稼ぎにとって最も重要な作業だといえるだろう。ルシフェルもその必要性はわかっているらしく、ブラムの提案に同意した。

              

                

■困惑の出撃■

聞き込みを終えた2人は車の中、被害者が口をそろえて言った台詞に頭を悩ませていた。

「ブラムさんは・・・どう考えていますか?あの証言・・」

「そうだねぇ、おっさん達の言ってたことが本当だとしたら・・俺たちが今こうしている事は無駄な事になるのかもしれないって

いうことだろ?」

ルシフェルの問いかけにブラムは困ったように煙草を揉み消しながら答える。

(・・あれだけの人間に聞いて誰もが同じ事を言ったのなら・・きっと本当のことなんでしょうね・・・)

ルシフェルは被害者たちの証言を思い出しながら深々と溜め息をついた。

                    

・被害者たちの証言@

《盗賊団の武器は小さなナイフなどではなく、騎士たちの使うような大型の剣であった》

盗賊とは本来剣を使う事を得意とはせず、小回りの利くナイフ等の武器を用いる事が多いというのにも拘らず・・・事前の情報として手に入れていたものを

見ると、この事はダルテ・アリュールの盗賊団も例外ではなかったはずなのだ。それなのに、証言をしてくれた人々は口をそろえて盗賊団の使用していた武器

は大振りの剣であったと言う。

                 

・被害者たちの証言A

《今まで盗賊団が鍛冶屋を襲った事などなかった》

今まで、街で評判の金持ちの家や食べ物屋、そして金目の物を売っている所しか盗賊団は襲っていない。それなのに今回に限って

鍛冶屋である。それに加えて、この街はいくら鍛冶屋があるといっても、いい武器を求めているのならば森を挟んだ向こう側の都会である

ルギャンシスタの街に行ったほうが確実だったりするのだ・・・。

                 

・被害者たちの証言B

《盗賊達の中に、ダルテ・アリュールの姿はなかった》

ルシフェルとブラムが困惑している一番の証言がこれである。ダルテは今まで、襲撃をする時は必ず盗賊たちを率いる形で

率先して徴発に参加していた・・という情報を持っていたルシフェルとブラムが賞金首リストに

載っているダルテの顔を被害者たちに見せると皆が口をそろえて言うのだ。こんな男は居なかった、と。

                     

これらの証言を聞いていくと、この街を襲った盗賊団というのはダルテ盗賊団ではないのではないかという結論に至りがちである。

無論ルシフェルもそう考えた。けれども、盗賊団の体には紛れもなくダルテ盗賊団の紋章が彫ってあったと言うのだ。・・という事は、

他に考えられる結論は・・・盗賊団の頭が代わったのだという事である。首領が交代したのだと仮定すれば、盗賊団の趣向が

変わった事にもダルテの姿が見られなかった事にも全て合点が行く。しかし、この結論に至ってしまうと新たな問題が生じるのだ。

その問題とは・・

「ダルテがもうこの世にいない場合・・・テストはどうなるんでしょうか?」

これである。ルシフェルは不安げに尋ねるが、ブラムの方はあまり深く考えていないようで・・。

「なんとかなるっしょ。ダルテが死んでたら新しい首領の方をとっつかまえるとかね」

「くきゅ(^_-)-☆」

(・・ユディトまで・・・・。もっとしっかり考えて欲しいんですけどね・・・)

ルシフェルは思わず呆れたように溜め息をついた。確かに盗賊団の首領となればダルテの代わりには打って付けとも言えるの

かもしれないのだが・・・。とにかく真実を確かめる兼ブラムの刀を取り戻すため、シルザシューダの森に向うしかないのだった。

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