こんなにも好きで こんなにも大切で
繋ぐ手は
こんなにもあったかくて、
キスする唇は
こんなにも優しさに満ちていて
触れ合う所から流れ込むのは
不器用な想いの名前
『即チ、君之証』
鋼錬 ロイ×エド
優しい君の髪は太陽の光を受け継ぎ、それはまるで神の御使いの様だ。
「君の髪は本当に綺麗だね」
感心したようにロイは呟いた。
「そうか?・・・でも、手入れなんてしてないぜ?」
いっつもそのまんま、とエドワードは気にかける様子もなく返事を返す。
エドワードの髪は手に掬うとサラサラと零れ落ちていく。
―――――そう、今の彼の髪は三つ編みを解いていた。
陽の光を浴びた金はさらに色を増し、窓を開けているので風が少しでも吹くと柔らかなソレはなんの
抵抗もなくそよぐ。
憂いを帯びた双眸はその年齢に不釣合いなほどの艶を生み、
唇は白磁のような肌のせいでいっそう赤く映える。
壮絶な世を生き抜いていくために鍛えなければならなかった身体はそれでもやはり小さく、細い。
少年というよりも少女のように映るそれはロイを一瞬で魅了する。
「・・・綺麗だ」
夢見心地のように紡がれた言葉は隣りにいるエドワードの耳にも当然の如く入った。
「・・・・あんたの髪も十分綺麗だと思うけどね、俺は・・・」
言った言葉にほんのりと頬を染めて俯く。
その可愛らしさといったらない。
「いや、私が言ったのは・・・まぁ、髪も含めての君の全てが、というつもりだったんだが」
「・・・・・・は?」
「綺麗だよ、鋼の」
ニッコリと甘く蕩けるような笑み付きで。
カァーッとピンク色だった頬が赤へと塗り変えられますますエドワードは俯いてしまった。
「・・・・男に綺麗とか言うな。それに俺は全然綺麗なんかじゃない」
何かを思い出しているのか声が微かに震えている。
その何かはおそらく過去に犯した罪のことなのだろうがロイはあえて気付かないフリをする。
余計な事を言って彼の心を曇らせることは避けたかった。
「鋼のが何を言おうと君は綺麗だ。この私が溺れてしまうほどにね」
ロイはエドワードの顎に指をあてがい、上を向くように促した。
眼と眼が合い、互いの鼓動が無意識に早まっていくのを感じる。
無類の女好きだといわれるロイ・マスタングも、エドワード・エルリックという人間を前にすれば見栄も
プライドも脱ぎ捨てて必死で彼の心を繋ぎとめようとする。
だがソレを悟られては大人の面目が丸潰れになってしまう。
だから彼の嫌いな余裕の笑みというものを纏ってみたりするわけで・・・。
内心はドキドキして心臓が張り裂けそうな程だというのに。
まったく、大の大人がみっともないことこの上ない。
「――――・・・どうせ他の女にも同じ事言ってるんだろ」
合っていた眼を逸らし、視線をロイの胸元へと移す。
「挨拶のようなものだからね・・・。けれど、そこに心はないよ」
私が言葉に心を宿すのは君にだけだ、ロイは言ってエドワードを抱き締めた。
「・・・本当?」
キュッ・・・とロイの軍服を握り締め、弱々しく問う。
「あぁ、本当だよ・・・」
君につまらないウソなどつかない。
ロイはほとんど吐息だけで告げた。
抱き合った二人に太陽の陽がよりいっそうそそぎ込む。
金と黒の髪は光を受け、明るみを増す。
闇の色である黒は光の色と静かに交わる。
相反するはずのものがゆっくりと互いを受け入れる。
「エドワード・・・綺麗だ・・・」
今日で五度目となる言葉。
「―――――-・・・ん、ありがと・・・・大佐」
否定されていたソレは笑みを含んだ返事に溶ける。
金と黒と。
光と闇と。
真逆のものが求め合い、堕ちていく。
「今度からは出来る限り手入れしてやるよ・・・」
エドワードは小さくロイに告げた。
―――――――・・・そうすればあんたはもっと綺麗って言ってくれるだろ?
返す言葉は決まっている。
「もちろんだ。だが勘違いはしないでほしい。君はどんなであっても綺麗なのだから」
ロイはそう言ってエドワードの髪に口付けた。
飾らない君がたまらなく好き。
―END―
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