―― Dreamer×Dreamer ――
―――― この世と常世の境に紛れる幾つもの色がある暗闇・・・一般的に言うところの、夢。 これはそれを職業に持つ、睡魔≠スちの話である。―――――
「・・・っあ、ん・・・ぁ・・」 暗闇の一つ・・・その中で一人の少年が熱に浮かされた肢体を淫らに投げ出していた。 少年を組み敷いているのは青い髪の青年。その頬には髪と同じ色の刺青がある。これは時空間職員≠フ 証である。ちなみに彼は時空間職・運命製造局・睡魔課≠フ職員。名をトクサという。 ―――― ピピピピピピピピピ。 「お、時間だ」 腕時計のアラームが鳴るなり、トクサはすんなり少年から身体を離した。 「・・・んっ・・・・やぁ・・」 中途半端なままで放り出され、当然ながら不満げな声を漏らす少年だが・・・・トクサは何の未練も感じて いないらしく、さっさと服装を整えて立ち上がる。そして言った。 「悪ぃけど俺、時間外労働はしないタチなんだ。また縁があったら会おうぜ」 未だ込み上げてくる熱に震える少年を見据え、ゆっくりと手のひらをその眼前に翳す。 「これは夢だ。せいぜい気持ち良く目覚めろよ」 ニヤリと笑うトクサの笑顔。その瞬間、一枚の大きなガラスが割れるように暗闇だけの景色が崩れ トクサの手の中へと吸い込まれていった。風景と共にトクサも姿を消し、少年の輪郭をも揺らぎ始める。
これは夢の終わり・・・・つまり、少年が目を覚ましたことを意味する。
時空間職とはその名のとおり、ありとあらゆる時空を超えて行う仕事である。 ついでに運命製造局というのはこれまたその名のとおり、人の運命を作り上げていく場所。 更にその中の睡魔課は人間の睡眠を操り、運命を少しばかり変えるのが仕事である。 例えばまだ寿命が来ていないのに働きすぎで過労死寸前の人物を眠らせたり・・・・あとは寝過ごした所為で 就職の面接に遅れてしまった、などというのがこの睡魔課職員の仕業。 睡魔課の職員のことを総称して睡魔≠セとか夢魔≠ニ呼んでいるのだ。
そして、ここがその時空間職・運命製造局。 現実の世界とは少しばかりずれた時空に存在することを除けば普通の商社ビルのような建物である。 ちなみに睡魔課はこのビルの8階。 エレベーターから降りてすぐの所に金髪の青年が如何にも不機嫌そうな顔をして立ち尽くしている。 彼は睡魔課の職員、アサギである。トクサとは同期の間柄。とはいえ、決して仲が良い訳ではないのだが・・・。 「あっれー? アサギじゃん。俺の帰りを待っててくれちゃってたのかなぁ? 」 アサギを見つけるなり、トクサはパッと明るい表情を浮かべ、気安く手なんて振ってみせる。 アサギはトクサをジロリと見つめ、呆れ果てたように大きく溜息をついた。 「あぁ、待っていた。懲りずにフザけたやり方で仕事を終えたお前に一言言ってやるためにな」 冷たい声で言い放つ。真面目に仕事に向かうアサギにとって、トクサのようなフザけた・・・・つまりは 夢の中でターゲットの人間に手を出しまくるというやり方が許せるはずもないのだ。 「フザけたやり方であろうと、成績すら良ければそれでいいんだよ。趣味と実益を兼ねた仕事・・・・・ 素晴らしいことじゃねーか」 「随分エラソーに言うんだな。成績がどうだろうと、お前みたいなやり方が認められるはずない。少なくとも 私はお前を認めないからな」 ヘラヘラと笑うトクサに噛み付くように言い返すアサギ。 同期という間柄だからこそなのかもしれないが、アサギはトクサの仕事に対するこの不真面目さが絶対的に 気に食わなかった。あんなやり方で成績を稼ぐトクサを汚いとすら感じている。・・・・いや、それ以前に トクサのチャラチャラした性格自体が大嫌いなのだと言ったほうが正しいだろうか。 「お前に認めてもらわなくたって大いに結構。っつーか、文句言うなら今月の成績表しっかり見てから言えっての」 トクサは大げさなほど大きな溜息を漏らし、アサギを小ばかにするような口調で言い放った。そうしながらも 歩みを進め、自分だけさっさと室内に入って行ってしまう。 どんなに小言を言ったところでムダ。どんなに注意してみせたところでムダ。分かってはいても何も言わずに トクサをのさばらせて置くなんてアサギのプライドが許さないのだ。 「〜〜〜〜〜〜〜〜、ちょっと待て! 話はまだ終わっていない!! 」 怒りをたっぷりと含ませた声を響かせ、アサギはズカズカとトクサの後を追って行った。
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