1998/07/14/TUE〜15/WED
二番目に行きたかった沢 900m
鈴鹿山系・仙ガ岳、矢原川左俣
MEMBER:ポッポ:伊東敏紀、伊東暁美 豊中:辻野晴子
       YMCC:森本栄子、内田裕子、川原健一、川原薫
記:YMCC・川原健一

  山へ行くのに二人共家を空けるには、休日よりも(子供たちが学校へ行っている)平日がどちらかと言えば都合がよい、との妻の発言を受けて、火曜の夜から一泊二日の山行を企てた。行く先は、鈴鹿は仙ガ岳に源を発する矢原川。その左俣は花崗岩の底抜けに明るい開けた沢、とのうたい文句で紹介されていた憧れの場所である。会で発表したところ、森本栄子さん、内田裕子さんの二人が参加を表明した。中級登山学校のコーチ研修担当者の打ち合わせの際、ポッポ会の伊東氏とも話が合い、
「行かんやろ(行くか)?」
 と彼が奥さんの暁美さんにも問うと、電話の向こうで
「行くよ〜」
 と聞こえる。そして
「蛭はいないでしょうね」
 と再度電話で確認もしてきた。
「蛭はおらん。鈴鹿に行って一度も噛まれたことがない」
「KRさんが噛まれた。ARさんもいると言った」
「おらん。大丈夫や」
 断言した。車に余裕があったら行きたい、と言っていた豊中・辻野さんも参加。かくて平日山行は決行されることになった。

  夕刻、三田発。栗東ICで無線を飛ばすも伊東氏からの返答無し。鈴鹿峠を越えて21:30、JR亀山駅着。JR、伊東車、内田車のメンバーがすでに待っていた。
  石水渓から坂本の集落への取り付き道はわかりにくい。石水渓バス停すぐ横を右に入らねばならないのを、地図の誤差でかなりアルバイトしてしまった。


止める者がいなければ朝まで飲む人々!?
  野登山林道取り付きのアスファルト道の片隅にポッポ会の10人用テント『ホテル・モスラ』を設営し、蒸し暑いのでその横で宴会を始める。スパークリングワイン、一升白ワイン、630cc赤ワイン、ビール、酒、タンスモーク、敦賀の蒲鉾、三田のサザエ佃煮、伊賀上野のフライドチキン、東住吉の焼売、プチトマトetc。出るわ出るわの酒と肴。それにも負けず会話も弾む。『肩を揉むと手が滑って胸に至る話』や『山行中に体調を崩した時にどう登るか』など、話題が尽きない。
「ま、明日は特に登らんでもいいし・・・」
 爆弾発言まで出る。しかし、1:50、何とか就寝に持ち込む。先々週、口ノ深谷で3時半まで飲んでしまった学習効果で今日は抑えがきく。しかし、一番飲みたい人がブレーキを掛けねばならないとは..。尋常な人達ではない。
「誰も止める人がおれへんのやもん」
(だから飲んだのョ)とは朝になってからのE子さんの弁。


07/15/WED/◎→○
  4:00、ヒグラシの声のシャワーに一度目覚める。みんな健やかに眠っている。
  5:00起床。寝不足とアルコールが少々残っている。
  6:30、野登山頂へ車回送。残り二台で矢原川林道を詰める。すれ違う余裕のない狭い林道を轍のままに車を進めるとやがてブッシュに行く手を遮られる。

  左手の杉の植林地の微かな踏み跡をたどる。右俣を渡っていつの間にか中俣も渡る。沢が小さいので戸惑い、大堰堤まで下ってしまう。引き返して左俣を探し当てる。先ほど見つけた小さなケルンが目印だった。
  最初は(何だこの沢は・・)と思うほど狭く、暗く、流れが細い。それがあまりに甚だしいので、本当に目的の沢かどうか疑ってしまう。2、3の小滝を過ぎるとやっと顕著な滝に出る。25m。アンザイレンして右岸の水際を攀じる。抜け際の一歩が楽しめる。そこからしばし歩くと不動下滝に着く。

不動下滝の登攀
  遥かな高みから細々とした水流が薄膜のようにスラブをなめながら落ちてくる。下滝は上級者向け、高巻きする、とルート図にあるが登ってみよう。
  右から数メートル登ると二本のボルトに至る。ここでザイルを着け、3m上のボルトに導かれて登る。ホールド、スタンスが細かく、滑りやすい。ランニングを取ってさらに3m上のボルトを目指すが、そこから上部にルートが見出せない。どうやら流れを右岸へ渡るらしい。そこにもランニングを取り、下のボルトまで下って振り子トラバース。水量が少なくて流勢に磨かれていないせいかヌルヌルの滑床だ。傾斜も少しあり、慣れていない人は大いに楽しめる。ソール(フェルト)のフリクションを信じて、大胆な動きと細やかな注意で通過すればよい。檜にアンカーを取りプルージックで後続を促す。取り付き部や渡渉部を楽しみながら、みんなワイワイ言って登ってきた。
  ここからブッシュへ高巻きルートがあるが、もう一ピッチ登ってみる。5m上部のボルトを目指すが、簡単なようでも結構渋い。花崗岩の一枚岩なのでハーケンを打ち込むクラックはなく、皺に打ち込んでも跳ね返されて入らない。うまい具合にポッドが見つかり、そこに四枚を固めてカシメ打つ。ボルトに着くとそれは斜めに、しかもシャフトの割りが見えるほど浅く打ち込まれている。しかしランニングを取ることで心は安定し、またあと数メートルは攻めの気持ちで登れる。動くハーケンと子供の小指ほどの木にランニングを二本追加し、抜け際では二本のハーケンに恵まれ、細い松の木を優しく掴んで乗っ越す。大木でビレー。ホッとため息をつく。伊東氏も堪能しながら登ってきた。ここから上の35mはツルツルのフェースでハーケン類も見当たらず、とても登る気にはなれない。さっさとザイルを回収し、巻き道へ逃げる。
  不動下滝上部で女性陣は待ってくれていた。最初の休憩を取る。
  不動上滝は下部二段10mを登り左岸を巻く。上段の滝壺で顔を洗いリフレッシュ。高巻きを終えると核心部は終了となった。

蝉時雨を浴びて涼風吹く稜線へ
  雑木の天蓋の小さな沢を辿る。右へ上へと歩けばよい。水がなくなる頃から傾斜が増し、ヒグラシの声を聞くとやがてスッキリとした仙鶏尾根の登山道に出る。小さな天狗茸が一つ、ひっそりと我々を迎えてくれた。
  仙鶏尾根はよく踏まれているが両脇がガレた所もあり、狭い場所はその道幅が30cmくらいしかない。北側から登ってきたガスが南風にせき止められ行き場を失う。その向こうに野登山のNTT無線中継所のアンテナが霞んでいる。
「ウワ〜。あこまで行くの〜」
  遠くに見えるが意外と近いはずだ。30〜40分くらい歩くだけだ。
  林道脇にザックを置いてアンテナの近くに止めた車を取りに行く。回送してくるとみんなも到着し林道で待っていた。
  照りつける太陽の下で濡れたものを乾かす。焼き肉をあてにビールで乾杯。内田、伊東、川原は沢の取り付きまで車を回収しに行く。14:30、矢原川林道終点。15:00、野登山林道発。

  矢原川は最近になって興味を持った沢で、意外と早く訪れることができた。思ったよりもこじんまりとした、時節もあろうが水量は少なく、沢の醍醐味からはちょっと拍子抜けした所であった。しかし、滝のスケールは大きく、総合的にはかなりのグレードを付けられる沢だと思う。同じ鈴鹿山系の愛知川本流を誰にも愛される人格に例えるならば、矢原川左俣は不器用だけど一本筋の通ったしっかり者と言ってもいいかもしれない。                       END

      三田         18:20
−19:30 栗東
−21:30 亀山
−22:30 野登山林道入口

      矢原川林道終点  8:10
−11:50 不動下滝
−13:00 仙鶏尾根
−13:30 野登山林道    15:00
−18:40 三田


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