|
静ヶ池は神戸市北区の船坂川支流の源頭にある小さな池である。落葉樹の混じった若い赤松の林に囲まれた幅100m、長さ200mほどの細長い池は、夏には硫黄を含んだ海水のような抹茶色の水を、冬には驚くほど深緑色の澄んだ色に変えて見せてくれる。その池に、冬の午後の半日を利用して家族で訪れた。
道場駅から30分弱ほどで鎌倉峡・山彦茶屋に着く。茶屋の藤棚のベンチでは、この日も知った顔が早くも宴を張っていた。確保ヤグラの色決め山行ということでヤグラ建設委員の面々が来ていた。私もその一人になっているのだが、後で合流することを約し、眼前に屹立するローソク岩の頂上に至るハイキング道に踏み入る。
『太陽と緑の道』と名付けられたこの道は少しガレているが、途中に鎖が取り付けられているので小さな子供でも登っていくことができる。90〜100mも登れば尾根に出る。歩き進むと右手に岸壁が現れ、前方にはローソク岩が雄々しくぞびえている。東壁の頭を右手に見過ごしてすぐに、三角点のコンクリート杭が打ち込まれた松の木陰の小さな広場に出る。ここが292.3mのピークで、北方に三田の市街地が望める展望台になっている。夏は涼しく過ごせるいい所だ。さらに行くと右手に広場。転落の心配もなく、子供達を安心して見ていられる所。ガスを出してラーメンやコーヒーを作る。
ゆっくりと休憩したら歩き出そう。雑木の混じった赤松の林の道をゆっくりと...。
秋口のとある日、道を外れてほの暗い林の下を歩いているとき、鮮やかなオレンジの炎がチロチロと揺れているので近づいてみる。普通は褪せているのに、時として鮮やかな朱色をしたトキイロラッパタケ(朱鷺色ラッパ茸)に心をときめかされる。そのシーズン、たとえ誰の目にも触れぬとも、鮮やかな朱色の小さな茸は精一杯の自己表現をして朽ちるのである。そんな小さなドラマを目にしたいがために、私は又、夢遊病者のように道を外れていく。
見過ごしてしまいそうな小さな堀切を渡り、笹を抜けると静ヶ池に出た。ここ数日の寒波で池は周辺部から凍り付いていた。清らかな深緑色の水面はピクリとも動かない。戯れに子供達が投げた石はコンコンと音を立て、池の上を転がり滑っていく。時折、薄い氷の部分がボソッと音を立てて石を飲み込む。ひとしきり石投げを楽しんで、記念撮影し、池を後にした。
帰りは途中まで引き返し、分岐から道場方面へ向かった。藤棚まで帰り着いた頃はもう夕刻。人数は減ったものの相変わらず宴会は続いていた。
ヤグラに登ってから我々も合流する。子供達は茶屋の池も凍っているのを発見し、そこで遊びだす。握らせてもらったチュー杯の缶に一口付けてから、妻が面々に問うた。
「きょうはどこか登ったんですか」
「きょうはヤグラに登ったよ」
楽しき酔っぱらい達の、予想した答えが返ってきた。
山彦茶屋 13:00--
13:30 安心広場 14:10--
14:30 静ヶ池 15:00--
16:00 山彦茶屋
|