立ち読み毎日
No・9 不定期刊
12月5日(1997年)
発行者:立飲み毎日のひらひらさん

 勝手に立ち読み毎日を発行しています。無料です。
 奇特な方は10円程度を酒・毎日の募金箱にお入れ下さい。
 危篤の方は救急車を呼んで下さい。危篤でない方は読んで下さい。
 今回のテーマは、火吹き竹です。

火吹き竹
 小さい時、かまどに足をかけたら、父親に火吹き竹で向こうずねを思いきり叩かれました。スネは皮のつぎに肉なんかこれっぽちもなく、すぐ骨です。弁慶の泣きどころと言われくらいですから叩かれた時、はい、無茶苦茶・・・・痛かったです。偉丈夫の弁慶でも痛がるのですから、幼い私には、かまどの神聖さ、それはもう骨身にしみました。
竈カマドに薪マキをくべて飯メシを炊く。落ちた松葉を炊きつけにして薪で五衛門風呂を沸かす・・・・。カマド、マキ、タキツケ、死語になりました。
 一尺イッシャク のマキより一寸イッスンの蓋・・・・このことわざも現代では理解されません。蓋をせずに火力を強くしても、蒸発の為、なかなか湯が沸かない、一尺のマキをくべるより、一寸チョットでも蓋をしたほうが良いという駄洒落をまじえた教えなのです。水1リットルを零度から100度にするには100kcalですが、1リットルの水を蒸発させる為には、約6倍の熱量が必要です。蒸発の潜熱センネツといいます。熱力学という学問なんか知らなかった昔の人が、ちゃんと生活の智恵として伝えています。ガスを使う現代でも、この教えは生きているハズなのですが、マキ・一尺・一寸が死語になってしまって、言う人がいません。
かまどの時代には、火吹き竹が必要でした。竹を、先端に節フシをつけて一尺半45cmから2尺60cmに切り、中間の節はくりぬき、先の節には錐で穴をあけました。息を吹き込むと、先端の小さい錐穴から空気が集中的に送り込まれ、火がよく燃え上がります。ふいごも同じ原理なのですが、この「ふいご」も見ませんね。きっと、落語家は、「いかけ屋」を演じる時には、ふいごをまず説明しなければいけないのではないかとおもいます。
 火吹き竹は、本来の機能以外に、いろいろな役割を果たしてきました。子供に火の神聖を教える為にスネをたたく為の棒・・・・これは、うーん、どうも私の父親にとってのしつけの為の道具かも知れませんから、一般的ではなさそうです。寄らば切るぞ、チャンバラの刀カタナ にもなりました。桶やザルをかぶって、火吹き竹を口にあてて・・・・虚無僧コムソウ、・・・・立派な、オモチャになりました。
木の桶もほとんど見かけません。火鉢もありません。テーブルに椅子で食事をするから椅子があり、踏み台が姿を消しました。ガスコンロで料理しますから、七輪を持ってる家なんて皆無です。
風が吹けば、桶屋がもうかる・・・・。風が吹こうが、槍が降ろうが、もうかる桶屋も損する桶屋も今では職業として成立しません。
 火吹き竹がありませんから、火吹き竹で親父にスネをどつかれたり、火吹き竹を鞍馬天狗のカタナや虚無僧の尺八にして遊ぶ子供もいません。ファミコンの画面で、ハチャッ、ハチャッという音を聞いて殴り合いのゲームを楽しんでいます。
煮炊きにガスを使う。便利なガスを使うから、薪をくべるカマドが無くなる。竈が無くなるから、火吹き竹が姿を消す。火吹き竹が姿を消すから、火吹き竹で遊んだり、叩かれたりしない。その結果、少年犯罪が増えた・・・・・・、うん?。

かつお節けずり器
 昔はあったのに今は見かけない道具、結構たくさんありますね。
鰹節削り器。真空パックの削り節の小袋が便利で、鰹節を削る家庭なんて、殆どありません。ある時、この酒・毎日で鰹節削り器で鰹節を削る時は、鰹節を押すのか引いて削るのか、という討論になったことがあります。私は、押して削る派でしたが、引いて削る派も頑強でした。僧は推す月下の門、僧は叩く月下の門、推敲してもあんまり違いが無いとは思います。しかし、鰹節は推して削るか、引いて削るか、誰も譲らず結構真剣に論争しました。
 論争に参加した人は、大阪生まれで北陸で一時期を過ごしたマスターをはじめ、生まれも育ちも大阪の建築会社の人、堺で育った新阪急ホテルのコック、山形県生まれの人、香川産まれで現在京都住まいの人、秋田出身の人・・・・・・、そして私が三重県熊野灘の漁師の息子という具合に、出身も職業も違う人間が、ある意味ではくだらない論争を楽しみました。
結局、鰹節削り器は刃の部分をひっくり返せば、押しても削れる・引いても削れる、どっちゃでもええ構造になってるんや、ということで一応全員が納得しました。でも、こんな論争、対象になる道具が生活スタイルが変化して以前はあったのに今は身のまわりから消え始めたから成立するのではないかと思います。

あられ炒り
 古来から受け継がれた日本の風習で、消え去ろうとしているものの代表が、餅つきではないでしょうか。
カマドに乗せた甑コシキ で餅米を蒸す。カマドもコシキもありません。蒸したモチ米を臼に入れて杵で搗く。ウスやキネなんて家の中に置いておく場所がありません。 ついたモチは戸板にモチトリ粉をしいて乗せる。戸棚がありませんから、戸板がありません。モチはムシロの上に乗せておいて、小さく切ってアラレにする。ムシロは一般家庭から姿を消しました。モチ切り器・・・・なくなりました。裏オモテに網がついていて周囲が丸い形のブリキ、木の柄がついた「あられ炒り」、これも見ません。ある時、宝塚の清荒神の露天で売ってるのを懐かしく眺めました。
 生活がどんどん変わってゆきます。家庭の中の道具もそれにつれて変わってゆきます。ガラスの醤油さし、プラスチック製になってしまいました。単なるノスタルジーだと言われても否定しませんが、小さい頃にはあった道具が見当たらなくなるのは、なんか寂しい気がします。

 あられ炒りは、アラレを炒るだけでなく、トンボのカゴにもなりました。

 ガスが便利なので家庭からカマドが消えた。カマドが無いので、餅米を蒸すことができないから、各家庭ごとでモチをつくことがなくなった。そのため、あられ炒りが姿を消した。あられ炒りがないので、子供がトンボを採らなくなった。子供たちはトンボ採りをしないので、仕方なくテレビゲームで遊ぶようになった。テレビゲームでは簡単に殴り合いや殺し合いができ、自分自身が痛い思いをすることがない。そのため、少年が犯罪を犯したり、若い親がわが子を殺したりするようになってしまった。

 風が吹けば、桶屋がもうかる・・・・・・・・。もうけようにも、桶屋がいないから、風が吹いても関係ないか、やっぱり。(今、もうけている奴は、いったい誰やぁー。)

 急に寒くなりました。風邪をひかないよう御用心を。

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