| 立ち読み毎日 No・5 不定期刊 発行者:立飲み毎日のひらひらさん |
| 勝手に、立ち読み毎日を発行しています。・・・・・・無料です。 今回は、サンマの腹。 サンマの丸干し 三重県熊野灘(私の故郷)や和歌山には、サンマの丸干しがあります。他の地方ではあまり聞かないので、なんであんな旨い物を作らないんだろうと不思議に思っていました。サンマの丸干しは大阪近辺には余り出回りません。清荒神参道の露天の1軒に時々並びます。 先日のテレビ番組で紀州のサンマずしを紹介していました。紀州のサンマは脂がのっていないからスシにしても旨いと言ってたのを聞いた時、昔からの疑問がやっと解けました。 サンマは親潮に乗って南下し、長旅に泳ぎ疲れた訳ではないと思いますが、あまり脂がのってない状態で紀州沖にたどりつくようです。脂ののりすぎたサンマは、丸干しにしたらきっと腹がグジュグジュになってしまうことでしょう。サンマの丸干しやスシは、結局熊野や紀州の特産ということになります。 クサヤ 2年前の出張で上野に宿を求めた夜、不忍の池の近くで大衆酒場の品書きにクサヤを見つけました。やっとクサヤが食える。さっそく注文しました。ずっと食べたいと思っていたのに、クサヤを食べたのはその時が初めての経験です。クサヤを知ったのは、芭蕉の連歌でした。どの連歌集か、五七五だったのか七七だったのか、その句も前後の句もまったく思い出せませんが、里にクサヤを焼く匂いがただようという内容の句でした。(ご存知の方、教えて下さい。) 酒場の厨房でクサヤを焼き出すと、店の客はまわりをキョロキョロ見始めました。クサヤの焼く臭いは強烈だと書かれているのは本当のようです。でも、漁師町に育った私には旨さを期待させるいい匂いでした。クサヤはムロアジを魚醤につけ込んでから干したものだということです。魚醤は魚のハラワタを海水に放りこんだ汁で、江戸時代から何百年も続く汁が自慢の老舗があるようです。その汁に漬けた魚・・・・想像するだけで生ぐささが迫ってきます。でも、漁師の子として生まれた私には、魚臭さを旨いと感じる食生活の基盤があります。 焼けたクサヤは私の期待通りの旨さでした。別行動をしていた同僚に翌日、クサヤが旨かったことを話しました。大阪育ちのその人もクサヤは食べたことがありません。関西にはクサヤがありません。ところがその人は、東京駅八重洲口のダイマルでクサヤを土産に買いました。私は買いたいのはやまやまですが、マンション住まいなので焼く時の臭いに近所が閉口するに違いないと遠慮しました。奈良の橿原にあるその人の一戸建てがうらやましかったですねぇ。 ハラモ ハラモとは私の故郷の方言(俚言)でカツオの腹ビレ部分の身のことです。高知や宮崎ではハランボと言うようです。このハラモはいわば脂と血のかたまりですから、とうてい刺身では食えません。漁師にとっても生ぐさすぎるからです。しかし、漁師は料亭の上品な客ではありませんから、このハラモもちゃんと利用します。塩をして干物にして焼いて食べます。脂がのっているのでカラカラには乾かず、クサヤよりまだ生臭いと言えます。私はこのハラモの干物も小さいときからの好物なのですが、近所への遠慮で我慢しています。 サンマの塩焼き 昔は七輪で魚を焼きました。魚の身からあふれた脂がジュウジュウと炭の上に落ち良い匂いがして、「焼きあがるまでの時間」も御馳走でした。今の一般家庭では、ガスコンロでサンマを焼きます。ガスコンロの下部のグリルに入れて焼いても、上部のバーナーに網を乗せて焼いても、部屋が煙だらけになります。私の家では掃除不足のグリルの受け皿の油に火がついて燃え上がってしまい、古いシーツを風呂場で濡らしてからガスコンロにかぶせて消したことがあります。(テンプラをしていて油が燃え上がった時は毛布を風呂場でビチャビチャに濡らしテンプラ鍋の上にかぶせて火を消します。かぶせることにより酸素の供給を遮断し、水の蒸発により鍋の温度を下げるためです。信じられない方は近くの消防署で確かめてください。) サンマの腹ワタ 我が家では、サンマの塩焼き以外にフライパンを使ったサンマのバター焼きもやります。ある時のサンマはあまりにも脂がのりすぎていて、出来上がったバター焼きはかなり生臭いものになりました。妻や娘はほとんど食べ残し、魚好きの私も生焼けの腹の部分は持て余しました。バターは沸騰温度が低いからと言えます。でも高温の油ではフライになってしまいサンマの旨さを味わえません。 私は信州での登山の帰りには松本駅でザザムシ・蜂の子・イナゴを肴に酒を飲むのが好きです。近所の山で採ったキノコについてる虫は、昆虫性タンパク質だと気にしません。ところがサンマの内臓に寄生するあの赤い虫だけはどうしても気になって、焼いたサンマの腹をまるごとパクパク喰らうことが出来ません。サンマの腹の、あの苦みを持つ旨さを寄生虫のせいで半減させています。(それはもったいない、ですって。はい、あなたがおっしゃる以上に私の方がもっと残念です。) 俺がハラワタの旨さをあきらめればいいからハラワタをとったバター焼きを我が家のサンマ料理の原則にする、と妻に威厳を込めて宣言しました。妻や娘にサンマの腹の旨さを味わってもらうためです。次回はそうなりました。 2匹のサンマを私が頭と尾に切り分けハラワタを取りました。妻がフライパンでバター焼きにしました。予想通り、生臭くないサンマのバター焼きの出来上がりです。四切れを三人家族で分けますから、一切れ余ります。魚好きの私が2切れ頂戴できます。私の皿に乗ったサンマを見れば、2切れとも頭の方でした。 うん?。ハラワタを取り除く必要あったんやろか。 魚の腹と背 食堂での昼食、私は「サバ煮定食、頭の方」と注文します。私は、魚のほとんどが頭の方や腹の部分、骨のまわりが旨いと断定しています。私の勝手です。目刺しの場合には頭とシッポを区別せず、まるごと頼みますが、マグロの腹は頼みません。トロは「値段」が特に嫌いですが「筋の多いすきみ」の味がトロより旨いと思っています。父親がカツオ船の漁師でもあったせいかマグロよりカツオが上等だと思う私は、「トロかつお」なんて書かれているのをみると「ふん」と思ってしまいます。先日、スーパーで「トロぶり」としてブリのハラの部分が売られているのを見た時には「アホかぁ、ブリの腹の旨さをマグロで計るな」と叫ぶところでした。 高校時代に銭湯で中年の男二人が討論していました。ツルッパゲがいい。いや、総シラガの方が良い。討論している二人の一人はちょっと薄くなった頭の、もう一人は白いものが半分くらいになった髪の持ち主でした。聞いてた私は、余りのほほえましさに吹きだしました。そんな討論に結論が出るはずがありません。 魚の腹と背、頭と尾っぽ、それぞれにうまいと思います。 |
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