立ち読み毎日
No・3 不定期刊 
発行者:立飲み毎日のひらひらさん

今回は、オヤジの言葉狩り です。

日本語八ツ当り
ことし、随筆家・江國滋が亡くなりました。落語の随筆やスポーツのエッセイで有名ですが、私は新潮文庫の「日本語八ツ当り」を名著と思い何度も読み、そうだそうだ何とかならんのか若者の言葉使いは、なんて同調してしまいます。江國滋の友人で、どうもその崇拝者であろう小沢昭一も「ことばの乱れが気になるのは老化のはじまり、保守化の証拠。・・・・・・」という書き出しで「腹立ちことば症候群」というエッセイを書いています。若者の言葉使いに、あれこれ文句を言うのは、彼らが「オジン」と表現する年齢に達した私たち「オヤジ」の特権です。私も48歳ですから、言葉狩りをする権利があります。しかし、テレビのレポーターや女房・娘の言葉尻をとらえるようなコトバカリするので、娘に嫌われてしまっています。
いくらでも食べれちゃう
寝れる、見れる、食べれる・・・・・・いわゆるラ抜き言葉ですが、もう私は、あきらめました。寝れるは、寝るという下一段活用の動詞に、可能の助動詞「られる」でなく、五段活用の動詞に付くべき「れる」が間違って使われている、なんて、文句を言う気が、なくなりました。大阪弁では、見られへん、食べられへん、と言うやろ、見れへん、食べれへん、て言うか。大阪弁の範囲だけでも、否定の助動詞に「ない」や「ん」を使わんと「へん」を使ぉて、この「ラ抜き言葉」を使わんようにしたらどうや、と言うユウ元気が無くなりました。もうこの「ラ抜き言葉」は、ちゃんとした日本語に変化したと認めざるを得ません。第一、この文章を作成しているパソコンのワープロソフト(一太郎)でも、NERERUと入力して変換キーを押せば、寝れるとちゃんと出てくるのですから。そして、大阪弁でも、「寝れへん」という変化が、確か、あった筈です。「食べれる」は、他動詞の「食べる」+可能の助動詞の組み合わせでなく、「食べることができる」という、独立した自動詞だと解釈するしかありません、他動詞「食う」に対して、自動詞「食える」があるように。
しかし、先日のテレビの女性レポーターがしゃべった、「いくらでも、食べれちゃう」という表現には、「こらぁ、まだ日本語はそこまで変化しとらんわい。」とつい怒鳴ってしまいました。
「ちゃう」は「しちゃう」で、「してしまう」の変化だと思います。ですから「自然にそうなってしまう」という意味では無いでしょうか。「食べちゃう」は、「(おいしいから我慢できず、つい)食べてしまう」という、関東方言だと思います。「(あいつは見栄っぱりだから、知ったかぶりをして、いたんだ豆腐も、酢豆腐はおつなものですなんて、能書きをたれて)きっと、食べちゃうよ」なんて、使うのではないでしょうか。「食べれちゃう」では、「食べることができるように、いつの間にかなってしまう」の意味に、「なっちゃいます」。(キュウリを、ヌカの中にいれておけば、いつの間にか漬物としておいしく)食べられるようになる、という意味での「食べれちゃう」なら何とかつじつまが合いそうですが、こんな日本語認めたくありません。「食べちゃえる」のほうがちょっとは「まし」かと思いたくなりますが、これもおかしな表現です。すんなり、「いくらでも、食べられます。」では、何故、いけないのでしょう。
千円からお預かりいたします
ダイエー系でプロントというコーヒーショップがあります。コーヒーが消費税込みで、168円と安いので、私は心斎橋店によく立ち寄ります。そこの店員の話し方に、気になる言葉使いがたくさんあります。たとえば、お持ち帰りで御座いますか、という表現。お持ち帰りは尊敬語、御座いますは丁寧語ですから、用法としては、間違った日本語とは言い切れません。でも、丁寧語の御座いますは、どちらかと言えば、謙譲語ですから、私は違和感を覚えます。お持ち帰りでしょうか、ではいけないのでしょうか。接客業の話し言葉のマニュアルというものがあるのかも知れません。プロントの店員の話し言葉は、大阪の心斎橋でも、関東の羽田空港でも一緒です。もし、接客言葉マニュアルというものがあるのでしたら作った人は改訂版を出して欲しいと思う私は、「責任者出て来い。」と怒鳴りたくなります。でも、漫才の人生幸朗師匠が亡くなった今では、「こらぁ、トミーズのマサぁ、おまえがぼやかんかい。」と声援を送るのが精いっぱいです。
大阪弁に「・・・・・・から」という表現があります。「今から飲むコオーヒイーなぁ、うまいねんでぇ。うまいけど、値ぇも張るねん、千円からするんやでぇ。」という具合に使われます。「千円もする」という意味でしょう。
 私が、168円のコーヒーの代価として千円札を出すと、店員は「千円からお預かりいたします。」とおっしゃいます。「千円から預かる」とは、どんな意味や。「当店は、5百円までは、金銭とは認めていませんから、お預かりするのは、千円(以上)からにさせて頂きます。」と言うてるのか、それとも、「(170円で構わないのに)千円からする大金を預からせて頂きます。」と驚いているのか。
 一円玉を数えて168円ぴったりを出せば、「丁度、お預かりします。」とおっしゃる。私は、「俺は現金決済で払いたいんや、勘定を今すぐ受け取って欲しいんや。預かって呉れるんやったら、預かり書を発行してくれんと困る。」と言いたくなってしまいます。
そして、レジの店員は他の店員に「アメリカンです。」と注文を告げ、注文を受けた店員は、客である私に対してでは無く、レジ係りの同僚の方に向かって、「はい、かしこまりました。」と返事なさいます。同僚との会話にも敬語を使うという上品な職場環境のようです。

大和河内のケイタイ化
若者の語尾上がりのアクセントが取りざたされて久しくなります。日本語で言うアクセントとは音の強弱ではなく、音の高低(イントネーション)なのですが、例えばレポーターは、本来レ・ポー ̄・ターヽというように語尾が下がります。しかし、レポーター魂というように形容詞的に使われる場合には、レ・ポー ̄・ター ̄・ダマ ̄・シイヽという具合に、ターの部分が平板または語尾上がりになります。これは、大阪弁でも、標準語でも同じだと思います。ところが、今では単独にレポーターと言う場合も語尾上がりです。サポーターが語尾上がりの場合は、サッカーのJリーグのファン、語尾下がりの場合には、膝の関節なんかに付ける伸び縮みする布製の包帯状のものという具合に使い分けさえされています。この語尾のイントネーション変化は特に若い女性に多くみられます。彼女たちが「オジン」と一言のもとに切り捨てる「年配」の私たちが、そのことを指摘すると、「言葉は変化するものや。」と簡単に切り返されます。返す言葉に詰まってしまう私は、「うるさい、おまえに言語学の講義を受けとぉ無いわい。」と思うのですが、先に言語学のイチャモンをつけたのがこっちですから、うーん、とうなって黙るしか手はありません。
北陸方言は例えば、ほやぁホ・ヤー〜という具合に語尾が一旦下がった後に上がる特徴があります。26代の継体天皇は突如として、北陸から大和の大王になります。きっと、大和や河内の言葉が語尾上がりの話し方になったことでしょう。今の、大阪の若い女性たちは、携帯電話で語尾上がりで、そオそオそオそオなんてしゃべりながら歩いています。彼女たちは「重ね返事の行儀悪さ」なんか全く無視です。
 わが子だけは なるな大和の ケイタイ化
 やンか・かアかア・うンうン・そオそオ・なアなア・でエでエ ネーチャンに (字余り御免)

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