立ち読み毎日
No・1 不定期刊 
発行者:立飲み毎日のひらひらさん

 勝手に、立ち読み毎日を発行いたします。無料です。
今回は、かもなんばについての話です。毎日の客のT氏が語った、かも・なんばの なんば は、難波がネギの産地だったから、なんば だと言う説に、私は異論を唱えたのですがどうも本当だったようで、そのことに対してごめんなさいと、面と向かってあやまるのがくやしいので、文章にします。これが、立ち読み毎日を発刊する動機で、どうも私の冷や汗の発汗の種となりそうですが酔った勢いで始めることにします。呑んだ帰りの電車で読んで下さい。読んだ後の処分については何も申し上げないないつもりですが、できたら道端に捨てず、ちゃんと、ゴミ箱に入れるか、再生処理に回してください。
立ち読み毎日と言うからには、毎日発行せんとあかん、と言う人が居ると思いますから、へっへっへ、不定期刊ときちんと書いておきました。


 私は、酒・毎日には結構足しげく通っているのですが、ひらひらさんと蔑称で呼ばれてしまっています。そして、入店した途端、マスターから、「5分たつまで、しゃべったらあかん。」と、厳命されます。【しゃべり】の私には黙っているのはつらいことです。口でしゃべれないのなら、紙にしてやれと、対抗することにしました。
私は、駄ジャレが好きで、「タカハナダカ、ワカハナダカ、タカノハナガ、ハナタカダカ。タカハナダト、ワカハナダデ、ワカノハナモ、ハナタカダカ。」なんて言ってはみるのですが、だいたい無視されました。貴花田が横綱に、兄の若花田は大関になり、初代の貴の花が双子山親方を名乗り、初代の若乃花と栃錦の取り組みなんか遠い昔のことですから、この駄ジャレはもう使うつもりはありません。だから、この駄ジャレで馬鹿にされることはこれ以降無いでしょう。
 ところが、私の友人のその知り合いがやったという宴会芸の話をしたばっかりに、私は【ひらひらさん】と、この毎日で通称されています。
宴会の席で、ある芸達者でない男が、いやいやながら、お盆と皿を手に持ち、「それでは、お祝いに花火を上げさせていただきます。」と言って、お盆を頭の上に上げ、「ボーン」、そして、皿を上に上げ舞わせておろしながら、「サラサラサラ」とやったそうです。これが、えらく受けたそうです。
この、ボン・サラサラのせいで私は、いつの間にやら、ヒラヒラさんとかペラペラさんと呼ばれるようになりました。それも、サラサラでなくヒラヒラですから、不当な扱いです。抗議したいところですが、わたし自身、所属している山の会では、チンカ・マンカ、チンカ・マンカと東京音頭の替え歌を歌ったせいで、ちんたさんと呼ばれていますし、妻子からは、嘉壽夫と言う名前でなく、カズノコと言われていますから仕方ありません。でも、まあ、ひらひらさんも、実は結構、気に入っているのです。

かもなんば
 T氏が言う。
 かもなんばの語源知ってるか、鴨とネギが入っていて、昔、難波がネギの産地だったからカモナンバと言う、とおっしゃる。毎日のマスターの奥様も同調する。
私は反論する。難波がネギの産地だったなんて、聞いたことが無い。絶対に違う。ナンバは山椒の意味や。
 私の田舎(三重県)では、ナンバはトウモロコシを指す。多分、南蛮黍キビ の意味だろう。また、唐辛子を、ナンバンという地方がある(確か、北陸地方)。だから、私は、蕎麦やうどんに鳥の肉をいれたから鴨、山椒を振るから南蛮で、鴨南蛮は、山椒を振った鳥肉入りの蕎麦やうどんの意味だと言い張った。
そして、自説を確かめてみる為、講談社学術文庫の「大阪ことば事典」(牧村史陽 編)定価1800円(本体1748円))のナンバの項を開いてみると、T氏の説の方が正しかったので、私は、正直、困ってしまい、どういう具合に弁解するかと悩んでしまった。私が間違ってました、とあやまるのは、けったくそ悪い。  これが、立ち読み毎日の発行を思い立たせた。山口瞳に居酒屋兆次という小説があり、その題名だけをもじって、「お話・立ち飲み毎日」として、客の話を収録したいという気持ちがずっとあったのだが、丁度良い機会ではないかと思って、読まされる人の不快には一切感知せずに、立ち読み毎日の第1号の作成にかかった。

ナンバ【難波】(名)ねぎ(葱)の異称。難波がその主産地であった故にこの名ができた。赤いも(里芋の一品種)を厚さ三、四分(約一センチ)前後の輪切りにしてねぎを加えた汁を、ナンバという。秋口の一般惣菜であった。
『嬉遊笑覧』巻十、飲食の部に「又葱を入るるを南蛮と云ひ、鴨を加えてかもなんばんと呼ぶ。昔より異風なるものを南蛮と云ふによれり。これ又しっぽくの変じたるなり」と見えるが、これは解釈が間違っていて、葱のナンバをナンバンと訛ったところからの誤解であり、ねぎ汁はそんな異風なものではない。
『双蝶々曲輪日記』(竹田出雲ら作、寛延)四段目に「平ヒラは大根と油揚アブラゲ、焼物は小鯛のなんば煮、こりゃうまかろ」
『全国方言辞典』には「なんば→なんばん。ねぎ。大阪(俚言集覧)・奈良県吉野郡・大阪」とあるが、この書も南蛮と混同しているようである。

私は、ワープロでの文章に、フリガナ・ルビを付けるのが、ジャマクサイので漢字のあとに、半角カタカナで読みを入れている。だから油揚にあぶらげというフリガナが付いてたのを油揚アブラゲという表現にした事を除けば、ワープロ入力ミスがない限り、大阪ことば事典の表記を忠実に書き写した。
 これでは、T氏に対し全面降伏しなければならないので、ナンバの次のナンバコの項も紹介しておく。

ナンバコ【南蛮粉】(名)とうもろこしの粉。

 うーん、まったく、反論のかけらにさえもならない。しかたがないので、ネギにまつわる朝鮮民話を紹介して、余白を埋めることにする。
ネギをうえた人 
人間がネギを知る前は、他の人間が牛に見えるので親や兄弟を食べてしまうことがあった。
 自分の兄弟を食べてしまった男が、あさましさにいや気がさして、旅に出た。
 そして、やっと誰もが仲良く暮らす国にたどりついた。
 そこでは、ネギを食べていた。
 以前は人間が人間を食べることがあったのだが、ネギを食べるようになってから、人が牛に見えることは無くなった、ということだ。
 男はネギを、故郷の村に持ち帰って、畑に植えた。
 そして、長い留守をわびるため、知り合いの家を訪れた。
 ところが、知り合いには、男が牛に見えたので、男は食べられてしまった。
 男の畑で育ったネギを食べた人たちは、もう、他人が牛に見えることがなくなった。

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