鳥瞰癖
若い顔若くない顔いまどちら夜の窓には琥珀が揺れる
人の目を見つめすぎるという指摘受けつつもなお不安な我は
冬空はずぶずぶ眠り後戻りできる最後の境界を越ゆ
しんしんと書を読み継げばいつか来る猫が日向の甘さを連れて
魂がほんのり透けて見えますよそんなに雨を見つめていると
"Meinungには意味がない"あっさりと君の報告打ち捨てられて
液体の如き悩みを背負いつつ君は上からもの言う男
我が負うは花の様なる妬心にてまた美しきつぼみがひとつ
誰にでも優しい人は頼りなくニアウォーターをらっぱのみする
あっけない恋の後味梅雨明けの緑はどこか息苦しくて
竹串でみずなす裂いて夏を呼ぶ水の都の天神祭り
陽をゆでる蝉の声々押し返し門の向こうで幼子が泣く
かさぶたをはがしそこねた思い出か深夜の風呂で泣いているのは
夏の夜の風に抱かれる濡れ髪は海に沈めし壺の静けさ
極端に言葉数減る日は陸にいることさえも拒む魚肌
藍甕にどっぷり耳をつけ込んでひどく虚しい言葉を聞こう
あっさりと消されたくない夏の夜と百鬼夜行へまぎれこもうか
ひとつだに言葉交わせぬ明くる間は水琴窟の中にわが寝る
ああ雲が空をひきずる音がするざざざざざんざあなたはいない
埋められてもはや誰にも触れられぬ水琴窟が静かに泣くよ
華やぎは近づくほどに遠ざかり癒やしがたきは我が鳥瞰癖
生き行きて神が居たとて居なくても泉州秋のだんじりよ ゆけ