遊歩
つまさきをあたためながら待つ夢の切れ端つかみ切れないで 春
あわあわと桜・桜湯・桜肉 人もはかなくなりゆくばかり
今もなお新奇メニューの注文をすればあなたが笑う居酒屋
ぐつぐつとまたぬるぬるとしてわたくしはどぜう地獄を見てみたいのだ
私より不器用に咲く朴の木の白い花びら むしってやろう
いつ見ても昨日生まれた顔をしてきみはなかなかはいとは言わぬ
どうしようもないほどどうでも良くなってしがみつく雨粒を見る
みしみしと雨が頭に滲みる日はひねもす眠る いらないからだ
飲んだ水に溺れてしまいもはやもうたった一人でいるほかにない
枝くぐる風の音かと思いきやさりさり髪が夢を食うおと
アレンジを加え何度も繰り返す主旋律また忘れ得ぬ人
ずぶずぶと眠りのように沈みゆくそんなつもりじゃなかったことへもうイヤだと言ってしまえばそれだけのことかもしれぬ 席を離れる顔あわすことがなければ生者より我に近しき歴史人群
目は未だ力を保ちおるのかと玄関脇の鏡を覗く
明日のこと君のことなど憂うよりまずは背筋を背筋を伸ばせ
硬軟を帯びた思想に至る迄もっと私は歩かなければ
我の記憶は牛の胃袋意味もなく昔のことをまた思い出す
赤蜻蛉土地の記憶は曖昧で無くてはならぬ場所さえも無い