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12月
絵はがきも届かないまま多分もう君は旅行を終えるころかも 海のあおを受け止めながら立つ浜に飲み込まれゆく私の力 満月も黙って吠えているだろうもっと荒ぶるものが欲しくて 告げざれば真とはならぬ言の葉を嫌いパソコンまた故障する |
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11月
幼なじみ持たない我は眠れども見知らぬ人の夢ばかり見る 夢でしかもはや会えない思い出を ほおいほおいと呼んで見ようか 毎回の食事を共にしたいなど言う人遠く誰もが遠く 日々老いていくのは人間だけでなく猫の目やにを日に数度取る 胸底をひっくり返し伝えたい衝動抱え瀧を見上げる 淡々と露わに落ちる白滝の水が私を同胞と言う 青空と大地になおも従わぬ風の領分ありて佇む |
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10月
幸せな浴衣の群れに逆らって帰宅を急ぐ なにもないのに もう少し覗かずにいる源光院迷いの窓に悟りの窓よ 逡巡を重ねなおさら行き惑う夕立前の空気は重い 無憂樹の半透明のデザートで別れを舌に学習させる 睡蓮の夜明け花咲く思いなど考えている眠れぬ夜は |
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9月
時々はお茶に誘えとイラストのねずみつぶやく君もおそらく しみを消す甘い錠剤忘れたいことの数だけ飲んでみようか 遠き世の神話が語る生命の樹など探しに行きたい夕べ 炎さえ吐けそうな日よ木々もまた雨のにおいを忘れたと言う 日焼け止め入念に塗り強すぎる人より我をしっかり守る 北斎の波の力を借りて問う君の心の真実などを |
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8月
老人となりても共に旅せんと君が告げたる雨期の街角 写真には残しきれない一瞬の表情をまだ覚えています クローゼット占拠するまであなたへの旅の土産はTシャツにする 田に水を入れるこの頃私の寂しさもまたみたされている 復讐の言葉親しき水無月の癒しきれない喉の渇きよ 五月雨や泣いてあなたをひきとめる誘惑一瞬浮かんで消えた |
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7月
かたむいた時間の中で生きている見えない砂に埋もれながらも 風化する街にとけ込み今年また死者に親しむ季節となりぬ 青葉風だれかをさらっていきそうなわたしが消えていきそうな午後 木も花もわが物顔に香りつつ人の香りを忘れ行く我 黒布で隠されたから忘れ得ぬ彼女の黒い瞳の強さ |
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6月
いくつもの支流呑み込みおおらかなメコンの様にほほえむ人よ 食べる寝るこれが欲しいと旅人の会話はいつもただ単調で 私がここにいることよそ者が増加すること街汚すこと 満月の頃に日本に帰ります誰ともなしに絵ハガキを書く |
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5月
水面に浮かびきれない感覚に語られなかったある夜の言葉 身の程がやはりどうにもわからない中途半端に頼りにされて 少年はもの言わず死に虐待の虐の言葉に試されている 「わたくしは誰かを助けられますか」「誰かわたしを救えますか」と 本棚の木彫りの猫とにらめっこしても答はでるはずもなく 幾千の合わせ鏡のその奥に逃げ込んでいるあの日の言葉 |
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4月
ロースクールバブル教官翻弄し静かに本を読む場所が無い 軟禁をそっと願えり古書達とこのまま塔で暮らせるならば もう少し長期計画望めども数年先のことはわからぬ ことさらに主張することなどなくて北摂おろし乾く唇 生きたいという情熱はまだ消えず仰ぐ飛行機雲の白さよ |
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3月
今はまだ会わないままの同級生賀状で縁を保ちながらも パソコンに京の和菓子のDVDかけ流しつつ賀状の返事 大切な人はそれほど多くない「人権」その他教えながらも 背をのばしまずは歩こうどす黒いニュースが空を覆わぬように 一番の大吉くもりなき月夜満ち足りたものは何でもこわい 夜動くものの多さよ挨拶を交わすは星と月と人々 |
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2月
声が声を飲み込みやがてふくらんで一万人が歓喜を歌う 指揮者佐渡平和を祈りこの冬も第九のタクト勇ましく振る ユニゾンは綺麗に響き合いながらわたしはわたしあなたはあなた 守るべき対象さえも取り違え人を殺しに君もゆくのか たくさんの人がふたたび死ぬだろう半枯れの木で呟くカラス |
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1月
激情は恋慕あるいは憎悪より生じて君は月光を弾く カフェインを摂らないわけを聴きながら私はとても息が苦しい 打楽器のピアノ消えゆく音達を弔う君の指はやさしい ひたすらに緑の中を歩む夢いつしか髪も緑になって 恋人を明けの明星照らす頃わたくしはまだ微睡んでいる 私の心は少し重すぎてニケの翼で空は飛べない |
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