3月
水の絵を見せて下さい透明で静かでそして力ある絵を
後ろ手に凶器をもってあの人はまた傷ついたと訴えに来る
死してなおおまえは私のものと言うピエタの母のその所有欲
4月
嫉妬また怒り伴うさびしさはひりひりとした海のようだね
一人とう孤独に引きずり込みたくて私は星に不幸を渡す
5月
ゆっくりと引きずられ行く感情に我より軽きダフネを思う
さびしさはねんね根来の子守歌五月雨の中聞こえ来る時
6月
田植え待つ水田の泥をかき混ぜる触感抱いて見る秘色青磁よ
ペルシアのがらすは虫の羽色を陳列台で誇示しつつ居る
7月
我が知らぬ夜明けの雨の激しさを聞きつつかじるパンの耳
弱法師われの前行く弱法師あなたは何度人を許した
8月
言葉のみ、他には何も無い場所で知りし人ゆえ語らなければ
絹糸を紡ぐ時より厳密に唯一無二の言葉を告げよ
9月
蟄居十日今日も変わらず晴れなので空の香りのインセンス焚く
空に火を放つその日を待ちながら君の寝顔に微笑みかける
10月
先例を覆し行く我々の言葉何処まで有効たるや
埋められぬ質の異なるさびしさに片目をつぶり触れたり 我は
秋空は銀の刃物を振りかざしそこで銀杏が震えているよ
11月
柔らかな亜細亜訛りの英語にて我の名前を呼ぶ人がいる
日本人の見分け方など教わりて賑やかさを増す屋台で休憩
12月
冬空はひたすら晴れて何もかもあきらめやすい人を思えり
浅ましい顔になりしか私も友と別れた車窓に問えど
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